名残りは尽きねど… その3
ゆっくりすぎるほどの時をお店で過ごした後は、もう一つのお店へ。
私は、カネコイサオ、ワンダフルワールドとも、担当さんの異動があって、それについていっていろいろな店舗をまわって、今は元のお店に落ち着いていましたが、デパートの中のそこは、それとは別のサブのお店として立ち寄ることが多かったです。
自分がアクセスしやすい場所にあったのも幸いでした。
同じ服を売っているのだから、どこでも同じような感じになるかと思うと、これがそうでもなく、お店によって、どの商品をたくさん置くか、全体の雰囲気をどうまとめるか、店員さんの着こなしやお客さんの服装もお店によって雰囲気が変わっていたと思います。
独立店舗が、切り離された非日常的な時間と空間を提供してゆったりした気持ちを与えてくれていたのに対し、デパートの中の店舗は、目にした人が気楽に立ち寄れるフレンドリーな明るさに満ちていて、私はどちらも大好きでした。
いろいろな店舗が閉店してしまったので、顔見知りの販売員さんが集まって、これもまたうれしいところです。
ただ、さすがにもう商品がなく、DMのポストカードの残りなどを好きなだけもらえるようになっていて、その心遣いがうれしい。
ポストカードはフェアや絵型のお知らせなどの節目に出されて、洋服をトルソーに着せたり、いろいろディスプレイした服そのものの写真、プリントの模様だけを柄にしたもの、シンプルな地にロゴなどいろいろで、中にはカタログに出ていないものもあったりしました。
こういうのは捨てられずにあちこちにとってあるので、ちゃんと整理しないとなあと思います。
そんなものを見ながら、大好きな販売員さんとお話をしている最中に、よその店舗からいらした担当さんが、つかつかと近づいて、目の前にざっと広げてくれたものにびっくり。
この、ものがないご時世に、いったいこのベーシックで美しい品々は何事!?(←戦時中じゃないんだから…)
たった今、キャンセル連絡があった品々だということでした。
来るのがこの時間より早くても遅くても、見ることさえできなかったのです。
しかも、好きな形で持っていないもの、消耗品ばかり。
そして、「またにする」はないこのタイミング!
きっとそんなドラマは、この時期いろいろな人が味わったのではないでしょうか。
たまたま他店舗で残っていたものが入荷した時期に、ちょうどお店に行っていたとか、
別の用で行ったときに、リバイバル品が入荷したとか。
後になって、そんなのあったの~ と残念に思った品がどれだけあったことか。
前に書いた、犬も歩けば…状態ですね。
そうして、そういうお洋服は、深い縁を感じられて、その人のもとへ行くのでしょう。
私ももちろんいただいてきました。
記念写真を撮っていただき、2店の荷物をまとめた最後の大きな紙袋を提げて、私はお店を後にしました。
振り返ると、担当さんがそのままこちらを見送っていてくださいました。
どちらのお店でも、挨拶の言葉は、「さようなら」ではなく、「またいつか」であったのですが、
無条件にこの姿を肯定してくれていたお店がなくなり、私はこれからひとりになるのだという気分になりました。
実際には、大勢の人が愛して、これからも着続けると言っている服なのですが。
日付けが変わりました。
今日の夜、残っていたカネコイサオ&ワンダフルワールド、すべてのお店が営業を終了します。
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