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「ノンボテ」ボールペンを調べてみたら… その10 三菱鉛筆の社史より

(「『ノンボテ』ボールペンを調べてみたら… その9 かつ消え、かつ結びて」の続きです。)

『時代を書きすすむ 三菱鉛筆100年』(三菱鉛筆株式会社 昭和61(1986)年) という、三菱鉛筆の社史を入手することができました。

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その年表の中に、以下のような記述がありました。

1979(昭和54年) 10月 ペーパーメイト「ケルボ」販売提携。
1980(昭和55年) 差別化商品相次いで発売   消せるボールペン「ケルボ」発売(2/15)
(『同書』 P.222 年表より 抜粋)

販売提携とは、ペーパーメイトの「イレーサーメイト」を日本で三菱鉛筆が「ケルボ」という名前で販売する契約ということだと思います。(ノウハウを得て国産化する場合は「国産化契約」というようです。例:スティック糊の「ウフ」 同書 P139)
記事「その8に挙げたケルボの広告がのった雑誌も1980年のもので、矛盾はありません。
これで、ケルボの発売時期や製造元は確定したと言ってよいでしょう。

「エアペン」(ノンボテ)に関する記述はどうでしょうか。
まず、意外なところにありました。

 特殊な筆記具としてはプリンターペンがある。加圧ボールペンとしてノンボテGL-100があるが、超高速のコンピュータで出力される数値データを図形やグラフに処理するプロッターの記録用加圧ボールペンとして、超高速、超連続筆記に耐える機構と特殊インクを開発し、加圧ボールペンを完成したのは57年12月である。筆記性能のほかに形状や寸法精度にも高度の機械的性能が必要であり、これまで市場をほぼ独占していたアメリカ製をおさえ、多くのプロッターメーカーに採用された。いまや、パーソナルプロッター用のスタンダード製品と呼ばれるようになり、その開発技術がボール径2種、色も12色を揃えた超高速プロッター用加圧ボールペンにつながり、世評を高めた。

『同書』 第三章躍進 3 横浜事業所の充実 ●研究・開発の成果 P162より

ノンボテが出てくるのは、「プロッター用加圧ボールペン」の説明のためにちょこっと顔を出す程度です。
シェアを奪い取る功績を挙げたプロッター用ボールペンの説明に比べると、とてもシンプルですが、ここで注目すべきは、「ノンボテ」=「GL-100」であることです。

記事「その3」で調査したように、「ノンボテ」は「エアペン」の愛称だったはずですが(エアペンの軸に「nonボテ」と印字してあった)、ここでは「GL-100」、つまり「スペースラブ」を指しているのです。
スペースラブにも「ノンボテ」という名称が印刷してあったかはわかりませんが(スペースラブと言う名前で認識されていました。画像では印字が読めませんでした)、少なくとも社内では加圧式ボールペン類が「ノンボテ」と呼ばれていた可能性があります。
正式名称「エアペン」「スペースラブ」を押しのけて、社史にさりげなく載ってしまった「ノンボテ」という名は、社内の人にも愛されていたのかもしれません。
また、このプロッター用加圧ボールペンの技術も、パワータンクに受け継がれているのかもしれず、興味は尽きません。

エアペン(ノンボテ)に関する記述は、以下の文章だけのようです。

1971(昭和46年) 創業85年記念行事として帝国ホテルに得意先を招待し新製品発表会を行う。(エアペン、ユニカラー、ユニプリント)

『同書』P220 年表より抜粋

日本初の加圧式であるとか、上向き筆記ができるとか、開発が大変だったとか、そういうことは何も書いてありません。「まっくろけのけ」の純黒や、水性ボールペンユニボールのようにヒットしなかったため、この製品は社史においてもほとんど語られていません。
エアペン発表の1971年 も、「その3」ステーショナリー タニィの調査と一致しました。)

でも、次の三菱鉛筆の社史には、これらの製品が文章として紹介されるかもしれないな、と思います。
なぜなら、加圧式ボールペンの開発努力は、21世紀に入ってから、ヒット商品パワータンクとして花開いたからです。
パワータンクの開発を語ろうと思えば、これらの先行商品は無視できない存在でしょう。
先人の意欲や失敗や努力という土台があってこそ、新しいものはその上に築かれるのです。
成功したものに目を向けるのは当然ですが、そこまでにあった努力を今回垣間見ただけでも、大変興味深いものでした。

社史の最後の方の見開きのカラーページに、当時の「現行商品」と思われる製品がずらっと並んでいました。
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その中に、「SPACELAB GL-100 宇宙でも使えるボールペン」と、金銀の「メタボ」が混じっていました。
解説もなく、それと知って探さなければ見つからないつつましい姿でした。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

1本の知らないボールペンから始まった楽しい調べものの旅、ここで一旦しめたいと思います。
また新たなことがわかりましたら、追記、訂正などをしていきたいと思います。
協力してくださったみなさま、読んでくださったみなさま、ありがとうございました。
補足、訂正をしてくださる方は、随時歓迎です(^^) 
ご感想もいただけるととてもうれしいです(^^)
どうぞよろしくお願いいたします。

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