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「ノンボテ」ボールペンを調べてみたら… その6 三菱鉛筆の努力

(「『ノンボテ』ボールペンを調べてみたら… その5 プロの記憶とレファレンス」の続きです)

現在、三菱鉛筆の加圧式ボールペンとして定評のあるパワータンクは、いろいろな方面から評価され、指名買い、定番買いの対象になっています。
パワータンクの発売年は2001年。21世紀生まれです。

しかし、今回、この製品が突然2001年に出現したわけではないことがよくわかりました。

【三菱鉛筆の加圧式ボールペンの変遷】(今回わかった範囲)

1971年 エアペン(NONボテ)使い捨てタイプ 60円

1974年 エアペン(NONボテ)ステンレスチップタイプ 150円

 (この後、使い捨てでないタイプも売られた模様)

1982年 スペースラブ 書き捨てタイプ 100円(以後10年以上売られる)

1985年までに  メタボ(金銀インク) 書き捨てタイプ 200円

2001年 パワータンク 

2002年 パワータンクスタンダード(プラスチックリフィル) 200円

スペースラブが10年以上売られていることから、おそらく、パワータンクスペースラブの後継として開発されたのだと思います。

一貫しているのは、「高級品ではなく普及価格帯の商品」であることです。
フィッシャー社のスペースペンは、私が調べた範囲でもその頃は安くても千円前後、むしろ、軸のデザインや素材で高級化し、輸入品であったにせよ、簡単に手の出ない価格帯になっていました。

千円で売っているものと同じような機能のものを100円やそこらで作る…ある意味無謀ともいえるプロジェクトです。
誰がどういう号令をかけ、開発に励んだのでしょうか。
でも、この商品群を見る限りでは、三菱鉛筆はあくまでその路線で加圧式ボールペンを開発し続けたようです。

フィッシャー社のスペースペンの芯は金属ですが、三菱鉛筆はエアペンの時から、プラスチック軸、またはプラスチック芯で作っています。
おそらく、加圧には金属のほうが向いているのでしょうが、普及価格にするならプラスチックでなくてはならなかったでしょう。
しかし、問題点も多々あったはずです。
(注: 最初のパワータンクは金属軸リフィルのものであったようで、これは現在も1本1000円、替え芯300円のタイプとして存在しています。プラスチックのものも加圧は変わらず3気圧です。プラスチックリフィルのものは、翌年2002年10月に発売されています。(→三菱鉛筆の「商品情報」へ)

エアペン(ノンボテ)の最初のカタログ紹介には、

新しい第三の筆記具と言っても決して言い過ぎではありません。

とありました。

でも、実際は、名前に反してボテが出ていたわけです。
1970年代は、いろいろな商品が開発途上で、「これで○○はもうOK」の夢の機械のような広告でものが次々発売され、「暮しの手帖」にテストされては「この愚劣な商品」「買うべきではない」とこっぴどく叱られていた時代ですから、誇大広告というのもちょっと気の毒な気がします。

従来品よりかなり良くても、「ノンボテという名前なのにボテが出る」と、消費者は満足しなかったのでしょう。
廉価な普段使いのものであっても、世に出てしまえば、「この値段で出しているのだから納得」とはなかなか思ってもらえません。
でも、三菱鉛筆は、加圧式をあきらめず、その路線で改良を続けたのでしょう。

後発の「スペースラブ」はかなり改良されたようで、「どんな上向き筆記も可能」に加え、「光学文字読取装置に最適」の新開発インクが使用されています。

この商品に思い入れのあった方もいるようで、文房具屋さんドットコムみんなの声コエこえ お気に入りの筆記具編の平成12年12月のアンケート結果には、

◆浮気もせずに使っていたが、製造中止に
 三菱ボールペンスペースラブ。浮気もせず、ずっと使い続けてきたのに、製造中止となりました。メーカーに問い合わせても無いし、あちこちの店に売れ残ってないかも確認しましたが、残念ながらありません。愛知県・パート・女・47歳

という、製造中止を惜しむ声もありました。
この翌年にパワータンクが登場するので、スペースラブは製造中止になったわけですね。この方はパワータンクに満足されたでしょうか?

パワータンクは現在、アウトドアの作業、濡れる場所、寒冷地などの条件の悪いところでも書けるボールペンとして広く使われるようになりました。
コンビニの文具棚の商品の中に、少々高くてもパワータンクが置いてあるのは、性能を愛して買っていく人たちがいるからでしょう。
個人であちこちに置いておくこともでき、いろいろな人がその便利さを味わえる状態になっています。

でも、それは、三菱鉛筆が「日常使える文具」としての開発努力をしてくれたからです。

文房具の中には、持っているだけで満足できるような、手のかかった高級品もたくさんあります。
でも、それだけが文房具のすべてではありません。
むしろ、普通の人が普段に使う文具が世の中には一番流通していて、それが高性能でストレスなく使えることが大事ではないでしょうか。
そこに力を注いでくれた三菱鉛筆は素晴らしい、と、今回とても思いました。

さて、ノンボテと並行して調べていたケルボはどうなったでしょうか? (続く)

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 関連記事は、 カテゴリー シリーズ:ノンボテ&ケルボ へ

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コメント

こんばんわ!

このシリーズ、面白すぎますっ♪
実は結末まで待ってから感想を書こうと思いましたが
もぉ、我慢しきれなくなってカキコ(笑)

いや~ケルボから始まりなんという大河連載に^^
本当に面白い連載だと思います。
けふこさんに出会えてこころからよかったと思っています♪

さて、愛知県・パート・女・47歳さんの記事、涙が出ますよね。
僕も彼女同様、愛用品が次々とこの世から姿を消すタイプなので・・・。

実は次にシグノ レインボーの記事を書こうと思ったら
とっくにこの世から姿を消していました・・・。

発売日はチェックしていますけど廃番については
ほとんどチェックをしない僕も悪いんですけど(笑)

この後の展開、楽しみにしています♪

投稿: モルB | 2008年8月 4日 (月) 00時27分

モルBさん こんばんは
ノンボテを調べるのがとてもおもしろかったため、
今回は読んでもらえなくてもいいから書きたい、というわがまま記事です。
広げるだけ広げて、どこまで収束できるかなあという、
自分にも予測のつかないところがあって。
でも、気に入っていただけてうれしいです。

私のリンク先を転々としまして、(たぶん)次はモルBさんのところに振りますので、お待ちくださいね^^(←迷惑?)

それから、ボールペンには詳しくないものですから、補足がありましたら、それもよろしくお願いします。

投稿: けふこ | 2008年8月 4日 (月) 20時38分

あっしの、微かな、●十年前(歳がばれる~)の記憶から、ここまでの調査をされるとは…。

御見逸れ致しました…。

投稿: みゃ~ | 2008年8月 4日 (月) 22時48分

みゃ~さん こんばんは
みゃ~さんが「ノンボテ」のことを覚えてくださっていたおかげで、
とても楽しく調べものをすることができました。
(一番調べてくださったのは、私ではなくて、ステーショナリー タニィのみなさまなんですけど)

世の中には、誰かが覚えていないと「なかった」ことになってしまうものって多いんだなと思いました。
個人の記憶は、正しいものも間違っているものもあるけれど、
その引き出しをあけて、中身を寄せ集めていったら、失われたいろいろなものが見えてきそう。
そういう作業をするのには、ネットはとても有効ですし、いろいろな方とネットを通してつながっていく楽しさも、今回たくさん味わえて、とても感謝しています。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

投稿: けふこ | 2008年8月 4日 (月) 23時06分

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