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ドイツの絵本『うさぎ小学校』に見る文具 ~筆箱事情調査シリーズ~

学校で使う筆記用具を持ち歩く筆箱は、いつ頃、どこで生まれたのでしょう。

明治43年(1910年)の伊東屋の通販カタログ『伊東屋営業品目録』に出ていた木製の「舶来製筆箱」がありながらも、欧米では学童が筆箱を持っていない、という『文房具の歴史』(野沢松男 文研社)の記述もあり、昔の筆箱について資料を集めて調べています。

今回は、ドイツの絵本『うさぎ小学校』(文:アルベルト・ジクストゥス 絵:フリッツ・コッホ=ゴータ 訳:はたさわゆうこ)をとりあげます。

Photo

これは、1924年にドイツで出版された絵本で、擬人化されたうさぎの兄妹が学校に出かけて勉強して帰るまでの一日を絵本にしたものです。
カバーの解説によれば、出版当時の一般家庭を映し出しているそうです。
絵もすばらしく、ほのぼのとした楽しい絵本です。

この話の中には筆箱は出てきません

(おかあさんうさぎの台詞)
「さあ きょうから がっこうよ。
キャベツのハンカチで はなをかんで。
石ばんと 石ひつと きょうかしょはもった?
ほら、字をけすスポンジも 水でぬらさないと。
手はきれいにあらったの?」(同書より)

Photo_4 兄のハンスは、ランドセル(にしか見えない背負い型のカバン)にものさしをさしていて、妹のグレートヒェンはランドセルからスポンジ(たぶん海綿)らしきものと、小さな布をぶらさげています。
少なくとも、妹はまだペンを使っておらず、石筆を何に入れたかまではわかりませんが、通常の筆箱ではないようです。
下校風景では、大勢のうさぎが海綿と布をランドセルからさげていました。
スポンジ(海綿)は、石盤の文字を消すのに使うそうです。

Photo_3 学校の机は、5人くらいが並んで座る長机で、手前の書く面は傾斜していて、奥側が床と平行で、そこに長方形と円形のへこんだ部分があります。
おそらく、ここにペンとインクびんを置くのだと思います。
机が傾斜していて子どもが書きやすいのか疑問なのですが、ペンなどは定位置にあるから転がらないのでしょうね。
でも、ここにペンやインクを出したまま帰ってしまうのは不用心なので、机の中にしまったりできるのかしら?

図工の時間、イースターエッグを作るため卵にを塗るのですが、用意しているものは、
固形水彩絵の具(円く固めてあるもの) 8色
角型パステルかクレヨン 8色?
・筆洗い … カップだったり花瓶だったり決まったものはない様子

です。

この絵本から、1924年当時のドイツの一般家庭では、少なくとも低学年は石盤・石筆によって文字を書いており、筆箱は使っていなかったようだと推測します。

ここからは余談ですが、不思議だったのは、ランドセルのことです。
ランドセルのサイトを見ると、同じような記述がたくさん見られます。(色文字はけふこによる)

ランドセルの歴史 ムトウランドセルホームページ ランドセルの誕生 天使のはね ランドセルの歴史
(まるきり同じ文章なので、どれがオリジナルかわかりません 天使のはねサイトの文章は後半部がありません。) 

ランドセルの歴史は、古くは江戸時代にさかのぼります。幕末の日本に西洋式の軍隊制度が導入された際、布製の背のうも同時に輪入され、軍用に供されました。これが日本のランドセルの事初めと言えるでしよう。

明治時代になり、同10年10月に開校した学習院は、8年後の明治18年になって生徒の馬車や人力車での通学を禁止するとともに、軍用の背のうに学用品類を詰めて通学させることになりました。この背のうがオランダ語で“ランセル”と呼ばれていたことから、やがて“ランドセル”という言葉が生まれ、それは通学用の背負いカバンを意味するようになり、それが現在に至るまで受け継がれています。これが現在の形でのランドセルのルーツです。

(中略)

なお、世界中を見渡しても似たような背負い式の通学カバンはヨーロッパの一部で使用されているに過ぎず、ランドセルは日本独自のものといえるでしよう。

サイト「ランドセル博物館」にも、「わが国特有の文化」と書いてありました。(引用禁止サイトなので、読みたい方は検索して読んでください)

でも、ドイツでランドセル型のカバンが学童用に使われていたのに、「日本独自」とか言ってしまっていいのかなあと思います。
絵本では、微妙に横長型みたいで、素材は革か布かわかりませんが、女の子用は絵もついていたりします。(続編の『うさぎ小学校のえんそく』の終業式風景にランドセルがたくさん出てきます。革製が多い?)
ふたは2本のベルトで底にとめる形です。
どう見てもランドセルで、訳者もそのまま「ランドセル」と訳しています。

現在も、ドイツでは学校用に背負い型のカバンが使われているようです。
獨協大学ドイツ語学科ブログのランドセルって何語?によれば、ドイツのランドセルも「ランセル」起源の「Ranzen(ランツェン)」、学校用ということで「Schulranzen(シュールランツェン)」と言うそうです。
つい20年ほど前までは、中学生の手提げカバンのような横長の革製背負いカバンだったのが、安全対策として「車のライトを反射し、目立つこと」がコンセプトとなり、派手なビニール素材が主流になったとのことです。
ここに書いてあった、「日本のランドセルは100年以上フォルムが変わらずに伝わっている世界で唯一の通学用鞄だそうです。」ぐらいのアピールでちょうどよいと思うのですけど。

ウィキペディアでは、ランドセルのことを「欧米の学校でも似たようなものが使われている。」とあっさり言い切っています
実際のところは私にはわかりませんが。

《ドイツの現在のランドセルはこんな感じ》

一言で「ドイツのランドセルはね」というのがいかに難しいかの多様さ…でも、しっかり存在しているのは確かです。

プッペンハウス ドイツ日記 … 2005年7月。チェック柄がかわいい。

ペロル ドイツのランドセル … ぬめ革無地のランドセル。昔のタイプはこんなだった? 使い込むほどに味がでそうで、シンプルで大人も使いたくなるデザイン。

ドイツの暮らしのキロクチョウ … 2008年3月。リュックサックみたいなクッションの効いた背負い紐で縦長のつくりなので、リュックサックに見える。どくろマーク?もついている。

楽しもうドイツ!! ドイツ版ランドセル … 2009年2月。ピンク系のカラフルな大型タイプ。日本のものより大きいのでは? ランドセルとおそろいで他の文具もある。筆箱もある! ドイツの子ども向けにちゃんと筆箱がある!

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【筆箱事情調査シリーズ関連】

→ カテゴリー シリーズ:筆箱事情調査 

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