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三菱ユニカラー240リミテッドエディションの日本の伝統色の謎 その2

(この記事は、三菱ユニカラー240リミテッドエディションの日本の伝統色の謎 その1の続きです。)

日本の伝統色を含んでいるのがセールスポイントの一つである三菱の240色色鉛筆uni COLOR 240 LIMITED EDITIONですが、選色に不思議なものを感じます。
それは、基本色でなく派生色のほうが積極的に採用になっていることです。

例をあげます。

106 HANAASAGI (花浅葱 はなあさぎ)
184 SABIASAGI(錆浅葱 さびあさぎ)

この2色の名前は、「浅葱色(あさぎいろ)」を元にしています。

『日本の傳統色―その色名と色調』(長崎盛輝 京都書院アーツコレクション)によれば、

・浅葱色
「浅葱」は嫩い(わかい)葱(ねぎ)に因んだ色であるが、その染色は実物の葱より青みがちの浅い緑青色である。(p.230)

・花浅葱
花色がかった浅葱色の意で、色票(注:この本は巻頭に色見本がついている)のような鮮やかな青色をいう。(p.235)

・錆浅葱
名称に冠せられた「錆」は、前出の「錆御納戸」と同じように破調を示す語で、浅葱色のややくすんだ浅い緑青色をいう。(p.164)

つまり、「花浅葱」「錆浅葱」は、「浅葱色」を基準にさらに色味を加えた名前です。
色をイメージするときに、まず基本の色を思い浮かべ、そこに色を足していくようなもの。
「水浅葱(みずあさぎ)」なら、浅葱色にさらに水色が加わった薄い感じの色かな、と想像できるわけです。

しかし、この色鉛筆には「浅葱色」が入っていません。
伝統色をイメージしやすくするためには、基本色を採用し、ゆとりがあれば派生色を加えるほうが、理解しやすいと思うのです。

でも、240色色鉛筆の色選定には、基本色を避けたような色が目立つ気がするのです。
「195 OMESHITYA(御召茶)」「196 RIKYUNEZUMI(利休鼠)」「212 KESHIMURASAKI(滅紫)」などは、基本の茶色や鼠色や紫は色鉛筆に入っていなくてもわかるので、それにニュアンスが加わったものと見当がつきますが、

○…入っている色、×…入っていない色

○108 NAKAHANADA(中縹 なかはなだ)
× 縹色(はなだいろ)

○178 AOSIROTURUBAMI(青白橡 あおしろつるばみ)
○214 KUROTURUBAMI(黒橡 くろつるばみ)
× 橡色(つるばみいろ)

○208 AONIBI(青鈍 あおにび)
× 鈍色(にびいろ)

となってくると、元になっている「縹色」「橡色」「鈍色」を入れたほうがよいのではと思います。

色を足し算でイメージするのは大体できる気がしますが、「青鈍」から青を引いた「鈍色」をイメージするのは難しいと思いませんか?

橡(つるばみ)色は、ドングリの実で染める色で、
・媒染で色味が「紺黒」や「黄褐色」になったりする
・「橡」単独で使われると、時代によってどちらを指すかが異なる
(黄褐色が「つるばみ色」の時代なら、区別するために「黒橡」と呼んだり。
など、簡単に言い切れない面があるようです。

でも、青白橡は「青い白橡」色らしいので、だったら「白橡」の方を採用したほうがいいのではないかと。
「つるばみ色」は黒っぽいと思っていて、「青白つるばみ」が緑がかったグレー(あるいはグレーがかった黄緑 けっこうものによって差が出る色)では、色の系統がさっぱりわかりません。
天子の色だから採用したのかもしれませんが、わかりにくいと思います。

ついでに、ユニカラー240では、「青白橡」と「麹塵」を2色に分けていますが、『日本の傳統色』ではこの両者を同じものとしています。
どちらも文献等に当たってのことでしょうから、そのくらい和の色名というのは難しいのだと思うし、そんなに厳密に分かれてはいないように思います。

こうやって見てくると、この240色色鉛筆は、グラデーションになる色選定を先に行い、その中の中間色に、たまたま当てはまる和名をつけたにすぎない気がします。
選定されている色名からは、「知ってる? これって○○色っていうんだよ」という単発の知識が得られるにすぎず、たとえば、「中縹」のまわりに、「縹」「深縹」「次縹」「浅縹」「白縹」と豊かに広がる色名の世界には行きつけません。

まず、「縹色」がどんな色か知ることが、すなわち伝統を知ることではないでしょうか。
本来、植物染料で人の手で染められた微妙な色はきっちり同じ規格におさまるものではないのですから、「基本の色をこれとして」があって初めて、「浅い」「深い」「薄い」「濃い」などが比べられるのではないかと。
「縹色」の色鉛筆があり、その横に「中縹」「深縹」の色鉛筆があれば、ああ、日本の色名ってこういう展開をしているんだなとよくわかることでしょう。

しかし、こういう微妙な色を和名で展開してしまうと、それだけでどうかすると200色超えてしまいます。
『日本の傳統色』に色見本がある色だけでも225色あるのですから。

「日本の伝統色色鉛筆」を作ってくれたら、私はうれしくてすぐに予約してしまいますが^^(ぺんてるのアクアッシュ12色は「日本の伝統色」タイプを持ってます)、一般的な需要を考えたら、中途半端な和名を使わず、全部外国名にして、「世界に通じる」で通してしまったほうがよかったように思います。
先の『日本の傳統色―その色名と色調』の中には、これらの和名もすべて英名が書いてありますから、できないわけではないのです。

せっかくuni50周年の記念に豪華な限定バージョンを作ったのに、どこか中途半端な気がしてしまうのは、こういうところにもあるのです。

個人的には、どうしてこの中に「桜色」がないのかなあと思います。
ほしかった色名はほかにもありますが、日本の色の代表なら、桜色を入れてほしかったものです。

実は、この色がほしかったのに、という不満を大体クリアしているのは、トンボの色辞典だったりします。
色辞典の色名は、和名、古名、英名にこだわらずかなり自由ですが、伝統色はたくさん入っています。

色辞典Ⅰ~Ⅲ集の90色の中で、『日本の傳統色』の中(本文含)に名前が出てくるものだけをとりあげてみます。(読みの違うものや「~色」のあるなしは考えないことにしました)
色をつけたものは、三菱240色色鉛筆の伝統色と重なっているものです。

1薄紅 2菖蒲色 3黒 4臙脂色 5銀煤竹 6鶯色 7千歳緑 8青褐(褐色の項) 9紫根(紫の項) 10梔子色 11萌葱色 12蘇芳色 13苔色 14鳩羽紫(紅藤の項) 15桜色 16一斤染 17鳥の子色 18白緑 19秘色 20瓶覗 21雀茶 22菜種油色 23麹塵 24緑青 25二藍 26梅紫

と、これだけで26色あります。
そして、本と少し呼び名が違う(色目も違うかも)伝統色系のものに、

1珊瑚色(本では珊瑚朱色) 2薄浅葱(水浅葱) 3鳩羽色(本では鳩羽鼠) 4濃藍(本では深藍) 6熨斗目色(本では熨斗目花色)

の6色があります。

そのほか、ネット上で伝統色として分類されているものに、
(サイト 和色大辞典 日本の伝統色 日本の伝統色 を参考にしました)

1若菜色 2蜜柑色 3枯葉色 4栗色 5杏色 6撫子色 7天色 8土器色 9芥子色 10渋紙色 11猫柳色 12柳葉色 13抹茶色 14砥粉色 15肉桂色 16山藍摺 17古代紫

の17色があり、これを全部足すと49色。
90色のトンボ色辞典のほうが、240色のユニカラーより伝統色が多いことになります。
(「桜貝」や「忘れな草色」や「李(すもも)色」など、伝統色でない和名の色はもっとあります。)
1988年発売で、今も売っていて、しかも、バラ売りがあって補充可能♪

トンボ色辞典は、「探していた色がきっとある」がキャッチコピー。
今までの色鉛筆になかった色を集めてあるので、ユニカラーのようにすべての色を順番に網羅するつもりはない色鉛筆ですから両者の性格は違いますが、色辞典がいい具合に肩の力が抜けている割に中身は充実しているのがおもしろいところです。

となると、ユニカラー240リミテッドエディションは、伝統色云々よりは、色そのものの豊富さをうたったほうが良いような気がします。
たぶん、絵を描いたりする場合に必要な色は吟味されているのではないかと思うので。

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