鉛筆に鉛は入っていない ~テレビ朝日「Qさま!!」の杜撰さ~
夕飯時に、たまたまかかっていたテレビ番組「Qさま!!」(テレビ朝日 2010年5月10日放送)。
見るのは初めてだったし、お膳を片付け半分で意識していなかったのですが、問題が「鉛筆を作っているところはどっちでしょう?」というタイプだったので、にわかに本気になって見てしまいました。
2つの動画が並んで映し出され、どちらが鉛筆の製造過程かを当てる問題。
問題には完成までの映像は出てこないし、紛らわしい部分をつないであるので、以前、鉛筆の製造過程をテレビで見ていても、確信が持ちづらくておもしろかったです。
見事? 正解して喜びました。
ところが、その後がいけない。
解説つきの製造過程映像になったときに、鉛筆の芯の材料の粉を入れている映像に、
「鉛 粘土 水」(順番は違うかも)という字幕が入りました。
いったい何事!?
鉛筆の芯に入っているのは、鉛ではなく黒鉛です。
今回の放送で使われていた鉛筆は、トンボの黄緑の8900番だと思います。
トンボ鉛筆のHPには、鉛筆に関するFAQがあります。
材料・原料について
1、鉛筆に鉛は入っている?
鉛は含まれていません。
芯は、黒鉛と粘土で出来ています。黒鉛は、炭素でできていて石炭やダイヤモンドの仲間(同素体)です。また表面の塗料にも鉛は含まれていません。(同HPより引用)
この質問カテゴリー「材料・原料について」は、「取扱・使用上のご質問」の次の2つめのもの、「鉛が入っている?」はその中の最初の質問、つまり、とてもありふれた質問です。
しかし、「鉛は人体に害がある」のは周知のことなので、「鉛筆」という名前から誤解を受けないようにと、トンボ鉛筆は塗料にまでも言及し、安全なことを強調しています。
テレビ朝日は、トンボ鉛筆の工場で取材させてもらい、工程について説明を受けたり、資料をもらったりしているはずです。
しかも、これはクイズ用の編集映像。
生放送や中継で、タレントがうろ覚えで間違えたとかいうレベルではなく、複数の人が製作過程をチェックできる状態なのに、こんな大きなミスに誰も気がつかないで放送してしまえるってどういう体制なんでしょう。
それも、個人のHPやブログとかではなく、桁違いの大勢が目にするマスメディアでありながら。
「鉛を原料とする鉛筆」…鉛筆のネガティブキャンペーンになっているじゃありませんか。
こんな番組に協力したトンボ鉛筆が馬鹿みたいです。
このあとの問題が、「消しゴムのできるまではどっち」だったので一応見ましたが、もう最初のようなわくわく感は失われていました。
こんな編集をする番組ですもの、ういろうと消しゴムの製造過程の最後だけがひっくり返って編集されていても何も不思議じゃありません。
黒鉛くらいなら私でもわかりましたが(別に、文具ファンでなくても大勢の人が知っていると思う)、専門の人でないと気付かないような間違い、あるいは意図的な嘘が垂れ流されても、番組制作現場でのチェックは望み薄です。
せっかく文具がテレビ番組に登場したのに、すっかり嫌な気分になってしまいました。
【追記】
5月11日現在、テレビ朝日 Qさま!!のページに、以下のようなお詫びが出ています。
(お詫びが放送されたかどうかは、私は見ていないのでわかりません。)
~訂正とおわび~
5月10日放送の「Qさま!!」の中で、鉛筆の芯の材料の説明で、
「黒鉛」のことを「鉛」(なまり)と表現してしまいました。
訂正しおわび申し上げます。
ふ~ん。
テレビ業界ではこんな風に言うんですね。
「鉛筆の芯の材料を、誤って『鉛』と放送してしてしまいました。鉛筆には鉛は使われておらず、正しい原料は『黒鉛』です。『黒鉛』は鉛とは無関係な炭素で、人体に害はありません。お詫びして…」
などという言い方が普通だと思っていました、私。
この調子では、
「材料の『砂糖』を誤って『塩』と表現してしまいました。」とか、「『大阪』のことを『東京』と表現してしまいました」とか、「『目撃者』を『犯人』と表現してしまいました。」とか、「『抗議殺到』の様子を『好評サクサク』と表現してしまいました。」とかのお詫びが出てくる日も近そうですね。
【追記】
2012年5月14日、「Qさま」で、「ここ10年で患者数が増えている病気」として「自閉症」をあげ、男性が頭を抱えて落ち込んでいるようなイラストをつけて、問題になりました。
(私は直接番組は見ていません)
〈おわびと訂正〉
5月14日の放送中、「ここ10年で患者数が増えている病気を選びなさい」という問題の正答の一つに「自閉症」を入れましたが、自閉症は先天的な脳の機能障害と考えられています。
また、同時に使用したイラストも誤ったイメージを与える表現でした。
おわびするとともに訂正いたします。
あいかわらず、「考えられています」とか「誤ったイメージを与える表現」とか、他人ごとみたいな文章ですね。
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コメント
僕も普段見ていないのですが、ちょうどご飯の時にやっていたので見て、同じことを思いました。
画面は良く見ていなかったので、アナウンサーがバカなのかと思っていましたが、画面にも表示されていたんですね。
これだと、黒鉛を鉛と表現・・・ というのも、鉛と炭素の区別もつかないのかと思ってしまいますね。
小学生でも理科で習いそうなことですが、ニュース等で出てくる話題ではないですし、まぁ知らなかったのはしょうがないとして、、、
もし知らなかったとしても、鉛が有害ということを知っていれば気づきますよね。それほどの無知なのか何も考えていないのか。
ちょっとレベルが低すぎます。
投稿: ぼび | 2010年5月11日 (火) 23時52分
ぼびさん 初めまして
コメントをありがとうございます。
(迷惑広告よけにコメント承認制のため、お手数をおかけしてすみません。)
音声でも言っていたような気がしましたが、そちらは自信がなかったので記事には書きませんでした。
こうやって書いていただくと、やっぱり音声で念を押していたんだなあとわかってうれしいです。(番組内容はうれしくありませんが)
字幕や画像の編集者だけでなく、さらに、台本作者も、それを読んだ人も、全然気づかなかったのだと思うと、本当に呆れてしまいます。
視聴者が番組の間違いを探すクイズ番組でもないでしょうにね。
「鉛が材料だから『鉛筆』って言うんだ。ふ~ん」の後は、
「ああ、ただの鉛じゃなくて、『黒鉛』って表現しなきゃいけないの? 別にいいよね、鉛は鉛でしょ?」
…こんな誤解をする視聴者はないと思いたいです。
今回はたまたま気づきましたが、自分が知らない分野で間違った知識が放送されて、それを鵜呑みにしていることもあるのではないかと心配になりました。
投稿: けふこ | 2010年5月12日 (水) 00時25分