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2010年12月

猫の血尿&頻尿

27日の夜(正確には28日の未明)、飼っている猫の様子がおかしくなりました。
猫トイレに走っていっては、長いこと居座る。
砂をいつになく激しくひっかき、近くにあった布まで巻き込まれている有様。
しかも、5分もあけずにまた猫トイレへダッシュしていきます。

変だなと思って猫トイレを見たら、猫砂が赤く染まっています。
これって、血尿?
分量は多くありません。
なのに、何度もトイレに行くのだから、頻尿状態。
人間なら、腎臓か膀胱の異常だろうなと思います。
よく見ると、猫がいた場所にもあちこち血がついています。

いつもなら2階に連れていって寝るのですが、この状態ではまた2階から1階のトイレに走りそうでかわいそうです。
1階に寝る場所を作って、猫と一緒に毛布に入って猫をなでていたら、落ち着いたのか我慢する気になったのか、トイレに行くのは止まりました。

家の洗面所の壁紙の張り替えなどでリフォームの業者さんがしばらく来ていて、人間もトイレやお風呂に行くのに不自由な生活をしていました。
猫もトイレをがまんしたり、自由に動けなかったりで調子が悪くなったのかもしれません。

翌朝は食事もして水も飲んだそうで、トイレの状態も昨夜のようにひどくはなかったけれど、暮れで病院が閉まってしまうと困るし、血尿の症状をネットで調べたら早期に治療しないと命にかかわる場合もあると書いてあったので、予定通り病院に連れて行きました。

動物病院は近くですが、ペットキャリーは10年来使っていないので出せる状態ではなく、たまたま買ったばかりの柳のフタつきバスケットに入れました。
中にギンガムの布つきですが、寒いかなと、ペットが乗るとほんのりあたたかくなるマットがちょうど入る大きさだったのでそれを入れ、さらにまわりを百円ショップのフリースひざかけ?を3枚入れてクッションがわりにし、猫を入れて、ふたをしてキャリーに縛って、ころころと転がして行きました。

猫は普段ほとんど外に出ないのに、かごに入れられた挙句知らない道をガタガタ動いていくのが不安らしく、時々大きな声をあげ、大丈夫だよ、病院に行くんだからと声を掛けながらの道中でした。

そこの動物病院は、いろいろな猫が椅子に上がったり受付から顔を出したりと、猫カフェってこんな風? と思うような雰囲気で、病院の猫たちが気ままに動き回っていました。
1匹の猫はこちらが持ってきたかごが気に入ったのか興味津津でかごに触り、診察の間もずっとかごの近くを動いていました。

猫の症状を話した後、尿検査をしました。(生年月日はさすがにわかりませんでした。拾った日はきちんと覚えていたので書けましたが。)
猫の下に膿盆を入れて、猫が動かないように押さえてから猫のお腹を押して尿を出させます。
張っているのになかなか出なかったようですが、やっと出た尿は血の塊の少し混じった状態で、血尿ではなかったです。
顕微鏡で調べて、石はないけれど細菌がいるということで(モニターで細長い細菌を見せてもらった)、細菌性の膀胱炎と診断されました。
猫も飼い主も飲み薬には慣れていないため、注射を3本打ってもらいました。
首のところの皮をのばして、ちょっとずつ場所を変えてぐいっと奥まで針を刺して…見ている方が痛いですが、猫はそうでもないのか、特に鳴いたりはしなかったです。

再びかごをキャリーにのせてころころと家へ帰りましたが、猫は今度は鳴きませんでした。
注射が効いたのか、かごから出したらだいぶ元気に動き回り(大丈夫だから病院はもういいというアピールだったり?)、トイレの様子もいつも通りに戻りました。
29日現在元気です。

病気と無縁の猫なのでかなりあせりましたが、大丈夫そうでよかったです。
暮れは、魚の骨が家人ののどにささってしまったりとか(過去記事魚の骨がのどに刺さったら…)、それ以前には、自分が荷物を両手に持って車から降りて歩こうとしたら、顔から転んでけが+メガネが壊れるとか(今より若かったのにどうしてそんなことになったのか)、いつもよりも病院のお世話になります。
この動物病院はお正月もやっているということでしたが、お正月は元気で迎えたいものです。

今回使用したフタつきバスケットは、4個セットが入れ子になっているもので、内側に布があるので、ものがひっかかりません。
フタつきバスケットは複数のお店で扱いがあり、サイズや色柄がお店によって少しずつ違うので、いくつか比べてみるといいと思います。
安価でかわいいです。

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日葡辞書に存在する矢立 ~筆箱事情調査シリーズ~

『日葡辞書』(1603~1604年成立)は、当時の日本語をポルトガル語で説明した辞書です。
つまり、ここに出てくる言葉は、当時、日本語として存在していたということになります。

〔私の使ったのは『邦訳 日葡辞書』なので、ポルトガル語の部分は日本語訳されており、ポルトガル語はほとんど出ていません。〕

『日葡辞書』の中には、先にあげたように「筆箱」「筆筒」は見出し語として出てきませんが、「矢立」は登場します。(意味部分の原文はポルトガル語です)

Yatate ヤタテ(矢立) インク壷のペン立てに似ている,ペン(筆)をさし込む筒.

『邦訳 日葡辞書』(岩波書店) より

矢立には扇面型もあります(扇面型が一番古いタイプのようです)が、この形容だと筒がついているようです。
また、きっちりした訳語がポルトガル語にないので、ポルトガルには矢立に相当するものがないのだと思われますが、日本語訳されているので断言はできません。
「インク壷のペン立て」に相当するポルトガル語を知りたいものです。
「イスラム圏のデイヴィットに似ている」のような記述もないので、ポルトガルではデイビットは知られていなかったのかもしれないし、デイヴィット自体がまだなかったのかもしれません。 ※注

1603年頃の日本筆箱事情

・矢立が普及し、それは筒の中に筆を入れる形だった。

・筆箱、筆筒は存在しなかったとは言えないが、一般的な語になるほどではなかった。

『羅葡日対訳辞書』の方も見てみましたが、私の持っている『羅葡日対訳辞書 備考』の2冊には、日本語のローマ字アルファベット順の「T」までしか項目がありません。
少なくとも、日本語の表記なら頭文字が「U」「W」「Y」は必要だと思うので、これは索引が未完なのかもしれません(別に刊行されているのかも)。
なので、『羅葡日対訳辞書』に「Yatate」がのっているかどうかは、今のところ不明です。

※注 イスラム圏のデイヴィット(矢立)の正確な成立時期はまだ私にはわかっていません。(見つかったものは18~19世紀くらい)
ただ、先の記事イスラム文化圏の矢立と筆箱の中に出てくる「クルス(十字架)型の矢立」がオランダ人が日本で作らせたものと解釈されているのを見ると、江戸時代のものと考えられているように思います。
デイビットの名前はOttoman Divitのようで、この語で画像検索すると、イスラム圏の矢立がたくさん見つかります。

〔このブログの関連記事〕

→ カテゴリー シリーズ:筆箱事情調査 … 筆箱(筆入れ)の歴史を調べています。今は広げるだけ広げて、エジプトの「パレット」、ローマの「カラマリウム」、イスラムの「デイヴィット」、この後は日本の矢立になる予定ですが、早く学童用筆箱に行き着きたいものです。

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ダイソーの文具柄コットンリボン&グログランリボン

いろいろな素材が豊富な百円ショップ ダイソー で、文具の柄入りのリボンを見つけました。
赤い綿テープに白い印刷で、羽根ペン、封筒、切手?、インク瓶が印刷してあるものと、茶色のグログランリボンに白い印刷で、インク瓶、羽根ペン、封筒、封シール?が印刷してあるもの。
どちらも、約12mm幅が5mで105円。

文具のプレゼントのラッピングのほか、自分で何かを作る時に、ワンポイントで使ってもいいと思います。
(グログランリボンは通常のグログランリボンよりパリパリした固めの感触です。)

Photo コットンリボン ナチュラル G-039 リボン298
グログランリボン ロマンティック G-039 リボン299
(画像追加しました)

ステーショナリー柄とかレター柄とかの細かい型番やリボン名はついていないようです。

☆その他の柄入りリボン☆

Photo_2 【コットンリボン ナチュラル タイプ(G-039 リボン298)】

・ソーイング柄(茶色に白の柄で、はさみ2種 ボタン 糸巻き 安全ピン? の裁縫道具)

【サテンリボン スウィート タイプ(G-039 リボン297)】

・ギフト柄(生成りっぽい白に薄い茶色の柄で、ギフト箱 ギフトタグ Just for you リボン)

・ティータイム柄(生成りっぽい白に薄い茶色の柄で、ティーポット クッキー ティーカップ)

サテンリボンタイプの方が印刷は鮮明ですが、コットンリボンの素朴さもいいなあと思います。

(私にとっての問題は、素材はたくさんあって、一向に何かを作らないことだと思いますが…)

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イスラム文化圏の矢立と筆箱 ~筆箱事情調査シリーズ~

葦(あし)ペン関係の資料を探して画像検索をしていたら、思いがけない画像が出てきました。
画像名は、イエメンの葦ペン なのですが、葦ペンだけではなく、金属製の容器がそばに写っていて…
矢立?」
金属の細長い筒に、開閉できる蓋のついた墨壷がくっついています。

矢立って、日本独自のものじゃなかったの?

何度も引き合いに出して申し訳ありませんが、『文房具の歴史』(文研社)の野沢松男氏は、筆入れを「どうやら誕生は日本のようだが」と考え、その理由として、日本では巻紙と筆を用いて机はなくても文字書きができるので、書く等具を携帯すれば事足りるというスタイル、その文化が筆入れを生んだと考え、その例として「矢立と大福帳」を挙げています。

でも、葦ペンを入れる「矢立」がここに存在するのなら?
厳密にいえば、日本の矢立では墨壷と筆の入る筒が直線上に並んでいますが、イスラムの「矢立」は筆筒の横側に墨壺がくっついた形をしています。
でも、両者は、見た目も機能も良く似ています。

イエメンの葦ペンの出ていたサイトは、写真でイスラーム で、写真も説明も豊富で大変参考になります。

★イエメンにもあるよインク壷とペン … タリムの図書館の展示品の、矢立型の携帯用ペン・インク壷。インク入れには真綿または絹糸を入れてインクを染み込ませたのだろう、と推測。(墨はスス、没食子、アラビアゴムが使われるらしい)

煌くハータム・カーリー … ハータム・カーリーはペルシアの寄木細工(素材やデザインは違うものの、箱根の寄木細工の雰囲気に似ている)。そのハータム・カーリーの「筆箱」の画像です。

矢立も筆箱も出てくるなんて、おそるべしイスラム!

ついでに、机上に置いておく文具入れも存在します。(★スルタンの書道道具

イスラム圏に筆箱や矢立が存在することやその理由は、「後期イスラム世界における紙と書物」(鈴木薫 東京大学東洋文化研究所教授)に詳しく書いてありました。(これは講義録か講演記録なのでしょうか? PDFファイルです)

要点をあげると

【ラテン文字世界】
西欧キリスト教世界 インクに鵞ペン 書道は発達していない

【ギリシア・キリル文字圏】
東欧正教世界 インクに鵞ペン 書道は発達していない

【梵字系世界】
インド~東南アジア 鉄筆でヤシの葉に刻む 書道は発達していない

【漢字圏】
中国 朝鮮 ベトナム 琉球 日本 墨と毛筆 柔らかい紙 書道は発達している

【アラビア文字圏】
イスラム世界 葦ペンに墨 書道は発達している

書道(カリグラフィー)が発達したのは、漢字圏とイスラム圏というのが興味深いです。

イスラムの書道道具は、葦ペンのほかに、

墨(ミュレッケプ) … ランプの油から出たを集めて乳鉢で練って、アラビアゴムを加え、さらにいくつか薬品を加えてねかしておいたもの。

墨壷(オッカ) … この中に生絹の糸屑を入れ、適量の墨を入れて、そこから墨をとって書く。

筆切り台(マクター) … 真ん中に窪みがあり、荒削りしたペンの先をのせて先をぷつっと切り筆先を整える台

筆切り小刀(カレム・トラシュ) … 葦ペンを削って尖らせる。なぎなたのような長い柄のついた小刀。非常に鋭利。

筆箱(クグール) … それら一式の道具を入れる箱

紙切りはさみ …(特に記述なし)

矢立て(デイヴィット) … 長方形の長い筒の一方の端の側面に墨壺がついたもの。筒の中に、筆切台、筆切小刀、筆を入れて帯にさして携帯する。(文人の象徴)

筆記に必要ないろいろな道具をまとめておく、または携帯するために、容器があったほうが便利ということでしょう。
ものを書く場面も2種類あり、

卓上 … 書斎に文机、その上に筆切台と筆切小刀など、あるいはそれらがセットになっている文箱のようなものがある。

画板(アトマ) …  膝を立て、片膝上に画板を置いて、右端から左方に書く。卓上で書くよりもこちらのほうが普通

机がなくても書ける文化のようで、昔の人は手に紙を持ち上げるだけで書くこともできたようです。

ヨーロッパよりも、イスラムのほうがはるかに日本の「筆記用具携帯文化」に近いです。
硯箱に相当する卓上用の筆記用具入れと、道具を入れる筆箱と、さらにコンパクトな矢立があって、机の上でなくても書いていますから。

矢立と共通しているのは、

・墨壷と筆と刃物が携帯できる。(日本の矢立は刃物を入れない場合もある)
・インクにあたるものの主成分がカーボン
・墨がこぼれないように、真綿などに染み込ませて使う

同じような形のものが別の地域に独自に存在することもあると思いますが(日本の矢立は日本で独自に生まれたものと考えて良いと思います。これについては今後の調査報告で)、筆記用具の携帯自体を日本独自ということはできそうもありません。

サイト「博物館百科」の「矢立」の項には、「クルス(十字架)型の矢立」として紹介されている図版があり、日本でキリスト教を禁止されてもオランダ人には信教の自由があって、その注文に応じてこれは日本で作られたのだろうという推測がありますが、この図版はここまでに出てきたイスラム圏のディビットと同じタイプなので、日本の産ではないと思います。
(デイビットがキリスト教のものだと解釈されたら逆に問題なのでは?)
日本離れした柄でも国産の矢立だと思われるほど、ディビットは「矢立」にしか見えないんだと思います。

イスラムの筆箱タイプの筆記用具入れは(HEILBRUNN TIMELINE OF ART HISTORY 〈13世紀 イラン西部またはイラク北部〉 メトロポリタン美術館所蔵)に画像があり、金銀象嵌を施されたもので、高さが4.1cm、長さが22.2cmと、サイズ的にも筆箱です。

Muslim metalworkers produced large numbers of pen boxes, many of which were richly decorated with inlays of gold, silver, and copper. A typical medieval Islamic calligrapher's pen box is an elongated rectangular object with rounded corners, about ten inches long, three inches wide, and two inches tall. In its simple construction, it is composed of a main body and a lid with two hinges along one of the long sides and a clasp on the opposite side. The interior includes a receptacle to hold the inkwell in one corner while the remaining space is reserved for a variety of reed pens and penknives.【後略】

説明に、「イスラムの金工は、たくさんのペンボックスを作りだした。」とありますので、これは特殊な例ではないことがわかります。
蝶番が長辺に2個付いて、留め金が反対側にあって、蓋がついた構造。
内部は、ペンとペンナイフを入れる場所と、インク壷を入れる場所に仕切られているようです。

ますます混沌としてくる筆箱の歴史。
次回はたぶん矢立関係になると思いますが、あらぬ方へ行くかもしれません。
(骨董筆箱とか、世界の学校の現在の筆箱事情なども出てくる予定です。)

☆    ☆    ☆    ☆  

サイト 写真でイスラーム によれば、シリアでは、日本の呉竹製のカリグラフィーペン(幅1.0mm~3.0mm 4色)が買えるそうです。(記事「★Arabicカリグラフィーペン
アラビア語を書くのに、先が平らな英語カリグラフィーペンでは書きにくいけれど、このペンは先端が右上がりカットになっているそうです。
輸出用のため、日本では購入できないそうで残念です。(2006年9月の記事)

【このブログの関連記事】

→ カテゴリー シリーズ:筆箱事情調査 … 調べているうちに、全然違う資料が見つかって、自分の予想外のところに飛ばされてばかりいる泥沼化シリーズです。インターネットがなかったらもっと早く行き詰っていたと思うのですが…画像や古書探しにも便利なインターネットの恩恵で、どこまでいくかわからなくなってしまいまいました。

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Calamarium 葦ペンを入れるケース ~筆箱事情調査シリーズ~

1593年発行の『羅葡日辞書』で、「フデヅツ フデバコ」と日本語訳されているラテン語Calamarium。(詳しくは、前の記事日本国語大辞典で『筆箱』をひいたらをご覧ください。)

この言葉をネットで検索しても画像が見つからなかったのですが、ブログ げたにれの“日々是言語学” の記事 「カラマーリ」と「カラマリ・ユニオン」に関するカラマワリ。 の中に、参考になる関連語がいろいろ掲載されていました。

calamus [ ' カらムス ] 「葦、葦ペン」。ラテン語

calamarius [ カら ' マーリウス ] 「葦ペンの」。ラテン語

calamarium [ カら ' マーリウム ] 「葦ペンを入れておくケース」

つまり、この「フデヅツ フデバコ」は、葦ペンを入れたもののようです。

これらの関連語をいろいろ組み合わせて、検索しなおしたところ、たぶんこれではないかという画像が見つかりました。

サイト The Private Life of the Romans の395「Pens and Ink」の図版262、「PENS,PENCASE, AND CRAYONHOLDER」(ペン ペンケース クレヨンホルダー)という挿絵です。
PEN CASEは葦ペンを入れるケースで、素材はわかりませんが、円筒状のマーブルチョコレートの箱のような形で、日本語で言ったら「筆『筒』」だろうなという形です。

ローマ時代が正確にいつからいつまでなのか私にはわかりませんが、サイト 世界史講義録 を参考に、紀元前50年くらいから200年くらい(カエサル~五賢帝時代)としても、ずいぶん昔の話です。

さらに、葦ペン用の PEN CASE は、別のタイプも存在するようです。
Answers.com の Reed pen の項には、ルーブル美術館所蔵のエジプトの葦ペンのケースつきの画像があります。
構造がよくわからないのですが、葦ペンを複数本差し込んである板状のもので、箱でも筒でもなく「筆『板』」とか「筆『挿』」とでもいうような形をしています。
この画像に、フランス語の「筆箱」を意味する「plumier」という解説もあります。
画像一番右の葦ペンケースは、エジプト18王朝(紀元前1336~1327年)のもののようです。

さらに、サイト 無限∞空間 さんの 神様装備品 の 道具 の説明の中に、この筆箱がエジプトの壁画風の絵つきでのっていました。
名前(用途?)はパレット。
「インクを混ぜ合わせるためのもの。カラムペン、インクとセットになっていることがほとんど」「書記官の必須アイテム」だそうです。
カラム=葦ペンで、インク壺は中身が乾燥しないようなつくりになっているとのこと。
このペンケースは葦ペン入れとインクを混ぜるパレットを兼ねている構造のようです。
(エジプトのインクの成分は、ぺんてるのHPの ぺんてるライブラリー によれば、黒インクは「煤煙をニカワで溶いた」もののようです。)

加えて、エジプトにも筒型のペンケースがあるようです。

サイト Bible Picture Gallery の StylusEgyptian writing case with stylus and ink.」という説明の画像は、尖筆? 用らしいですが、ペンケースとインク入れが鎖でつながった形になっており、その形状から、携帯用だと思われます。
(同サイトのパレット型ペンケースにも Stylus という説明があるので、これが葦ペン入れのことか、葦ペンとは別の筆記具が入っているのかは不明)

(このあたりは諸説あるようで、パレットにはインクが入っていて、水入れがくっついていてインクをのばして使う(ヒエログリフ読み書き講座)と説明しているサイトもあります。)

これらは、学童用筆箱とは大幅にずれている気がしますが、筆記用具を入れる筒やケース自体は大昔から存在していることがわかりました。
文字の誕生以前にまで筆箱の歴史がさかのぼることはないと思われるので、筆箱の歴史は、ここからどう発達(または衰退)していったかを見ればよいように思います。

【古代エジプトのペンケース】
・紀元前1336~1327年には存在した
・木製で、平たい板状。
・葦ペンを複数本差し込んでおく構造。
・インク?を入れるへこみが2個あった。(黒用と赤用?)
・筒状のものもあり(素材不明)、インク壺(水壺?)がつながっている。
・黒インクは煤煙をニカワで固めたものだった。

【古代ローマのペンケース】
・紀元前50年~200年くらいには存在した。
・筒型で蓋つき。素材は不明。
・葦ペンを入れて使用した。
・インク壺は、黒インク用と赤インク用があった。
・黒インクは、イカの墨が使われた。

自分の語学力や歴史力が追いつかないので、この両者についてはこの程度にとどめたいと思います。

この葦ペン文化を調べていたら、日本独自と思っていた別のものととてもよく似たものが、さらに別の国で見つかってしまったのでした。(続く)

【このブログの関連記事】

→ カテゴリー シリーズ:筆箱事情調査 … 欧米の子どもは筆箱を持っていない? 筆箱の起源は日本って本当? と調べていて、とうとうエジプト時代までさかのぼってしまったシリーズです。これからは現代に近づいてくる予定ですが、どうなることやら。

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日本国語大辞典で「筆箱」をひいたら… ~筆箱事情調査シリーズ~

学生の時に存在を知った『日本国語大辞典』(小学館)は、言葉の学習にとても重要な資料です。
国語辞典なのに百科事典並みの冊数(旧版は全20巻 第2版は全13巻+別巻1)のこの辞典は、言葉の意味を並べているだけではなく、その言葉が実際に使われた資料、それもなるべく古いものを用例として挙げています。
なので、その言葉がいつ頃には使われていたのか、その時はどういう意味であったのかがよくわかる辞典なのです。

この辞典で「筆箱」をひいてみたら、驚くべき資料が出ていました。

ふで‐ばこ【筆箱・筆匣】〔名〕筆を入れておく箱。また、鉛筆、ペン、消しゴムなどの筆記用具を入れる長方形の箱。皮製、布製に袋状のものなどもいう。
 *羅葡日辞書(1595)「Calamarium 〈略〉 Fudezzutҫu,fudebaco(フデバコ)」
 *狂歌・豊蔵坊信海狂歌集(17C後)「命毛のながき五十の筆はこを明てこころむるうのとしの春
 *殿村篠斎宛馬琴書簡‐文政11年(1828)3月20日「当地筆工に注文いたし、五拾本斗結せ候処、用立不申候。〈略〉打捨置、ふでばこをふさげ候のみ也」
 *和英語林集成(再版)(1872) 「Fudebako フデバコ 筆匣」

『羅葡日辞書』って、何???
『日葡辞書』なら聞いたことがあるけど、これは初耳です。
しかも、1595年って…明治どころか、江戸を飛び越して、関ヶ原の合戦よりも前、安土桃山時代ってことですよね。

『羅葡日(対訳)辞書』の性質は、サイト日本語教育学特殊講義2によれば、

1595成立。編者はイエズス会士(固有名未詳)。表紙に続いて、序、本文、補遺があり、 正誤表で終わる。

当時のヨーロッパで辞書の代名詞のように言われていた、アンブロジオ・カレピーノ(1440?-1510)の手になるラテン語辞書から、地名・人名の固有名詞と使用の稀な語とを除いたものを見出し語とし、それにポルトガル語・日本語の訳を付けた対訳辞書。「日葡辞書」に先行し、また与えた影響も少なくない(類義語の提示や語の選択性など)。ただ、ラテン語の対訳ということから生じる制限もあり、日本語を中心とした豊富な価値ある注記を有する「日葡」に及ばないところは多いが、「日葡」に見えない語も含み、また一見出し語に複数の日本語があてられていることから、当時の類義語の研究には役立っている。

となっています。

一方、『日葡辞書』は、

1603-1604,日本イエズス会の神父達により成立。

 来日早々の外人修道士にはまず前出の「羅葡日辞書」が用意され、この「日葡辞書」は日本語に耳慣れた外人のものとして準備された。

 見出し語は日本語、本編で25965語、補遺編で6831語ある。この見出し語の表記はローマ字でなされ、その綴りは当時のイエズス会の中心言語がポルトガル語であったことから、ポルトガル語式のものを利用する。これは当時のキリシタン版一般に通じるものであった。排列は当然アルファベット順であるが、動詞は語根(現在の文法で連用形と呼ぶもの)を立て、それに現在形(終止・連体形)、過去形(連用形にタの下接した形)を併記する(先ほどの例参照)。見出し語として採録されているものは標準語だけでなく、上述の目的にしたがって各種の語が見える。

つまり、

羅葡日辞書 … ラテン語があり、それを日本語で何と言うか説明。

日葡辞書 … 日本語があり、それをポルトガル語で何と言うか説明。

です。

たとえば、『羅葡日辞書』では、

Ef floreresco,as  → Fanaga vouoqu saqu,& saqi midaruru(ハナガ オオク サク & サキミダルル)

Terriculamenta,orum. → Fitono vosoruru yǔrei,fengueno mono.(ヒトノ オソルル ユーレイ ヘンゲノ モノ)

のように、ラテン語の語を日本語の文で説明しています。

調べてみたところ、羅葡日辞書に「筆箱」はありますが、日葡辞書に「筆箱」は見当たりません。
ラテン語で筆箱を指す言葉「Calamarium」の訳語は、「フデヅツ」「フデバコ」。
でも、日本語が先に来た場合、辞書にはのっていないようなのです。
羅葡日辞典の語数は約3万、日葡辞書は約3万2千語、日葡辞書の方が収録語数が多いのにです。
もちろん、日葡辞書の収録漏れや私の単なる見落としなども考えられますが、それよりも、ラテン語の「使用が稀ではない語」に「Calamarium」が存在するらしいことが驚きです。

日本国語大辞典の、筆箱関連語は、他に、

ふで‐づつ【筆筒】(名)筆を入れておく筒。ふでいれ。また、筆・鉛筆などを立てておく筒。ふでたて。ひっとう。(後略)
*羅葡日辞書の他の用例は、1886年の「筆立」の意味のもの、1905-6年のこれもたぶん「筆立」と思われるもの。

ふで‐いれ【筆入】(名)筆を入れる箱や筒。筆筒。また、鉛筆やペンなど筆記具を入れる箱。筆箱。(後略)
*用例は、1921年で、意味は「筆箱」

「筆筒」の「筒」が丸いものを指すことから、「筆筒」が筆携帯用のものを指すのだとしても、いわゆる「筆箱」の箱イメージとは異なるものだと思います。
また、「筆入」の用例は1921年ですから、比較的新しい語のようです。

Calamariumは「学童用筆箱」ではないと思いますが、机上用なのか携帯用なのかはともかく、ラテン語文化圏に「筆記具を入れる筒か箱」が存在したのは確かなようです。
学童用からは大幅に外れるものの、「筆箱」は日本固有のものではなさそうです。
(Calamarium については次回に)

☆  ☆  ☆

『羅葡日辞典』について

サイト父さんと母さんの実家の頁羅の細道によれば、『羅葡日辞典』(原題"Dictionarium Latino Lusitanicum ac Iaponicum") の現物は、世界に7冊しかないとか。

現物にあたるのは無理なので、私が資料として使ったのは、『切支丹版 羅葡日対訳辞書 備考』(島正三 編 文化書房)のⅠ、Ⅱ巻です。
これは『羅葡日辞典』の索引で、見出しを日本語(当時の発音のローマ字表記)にして全体を並べ替えていて、日羅辞典のような形式になっています。
元の辞典の性格で、日本語は単語とは限らず、見出しが文章になっていることも多いです。
先の引用部分は、元はこうであっただろうという逆の順序で掲載してあります。

『日葡辞書』は、図書館の『邦訳日葡辞書』(岩波書店)を使いました。
ざっと調べてきたので、ひょっとしたら見落としがあるかもしれません。
(確認に出かけたら図書館が休館で…不確かですみません)

【このブログの関連記事】

→ カテゴリー シリーズ:筆箱事情調査 … 筆箱の歴史を調べています。記事が追いついていませんが、今はさらに違う国まで調査の対象に…収拾がつく日が来るのかとても疑問です。

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