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2012年7月

入院・療養中の大収穫 『キングダム』(原泰久)

交通事故の結果、入院、手術、退院後も自宅療養と、今までの人生で一番長いお休みになってしまいましたが、開き直って休んでいたので、たいしたことはしていません。
でも、たぶん入院していなかったら、私はこの作品に出会うことはなく終わったでしょう。
『キングダム』(原泰久/集英社ヤングジャンプ・コミックス)に。

手術が済んだ後、ネット環境がないし、新聞も部屋にあるわけではないので、しかたなくベッドでテレビを見ていました。
でも、日頃、昼のテレビは見る機会もないので、売店で「TVガイド」を買ってきて、何かないかな~と見ていました。
そして、6月4日(月)のこと。
夜、7時は、運良く家にいればNHKのニュースを見ている時間ですが、たまたま目についたのが、NHKBSプレミアムで、
「新 アニメ キングダム『無名の少年』」
「新」だから、第1回なら話がよくわかっていいなと思いました。
でも、出ていた原作者も声優さんも知らないし、どんな話なのかなと、「TVガイド」のあちこちのページを見てみたのですが、
…何にも書いてない(泣) 
BSではあるけれど、第1回だし、深夜でもないんだから、アニメ紹介ページにくらい出ていそうなものだけれど、ほんと、見事に無視({TVガイドはそれ以降も無視し続けてます…オイ マジメにやれ)
題だけでは、どういう話なのかまるで見当がつきません。

第1回なんだし、つまらなければやめればいいし、とそれでも見てみる気になったのは、よほど暇だったからとしか思えません。
普段見ているアニメが一本もないのに、です。

そうしたら、
おお~! 舞台は中国、春秋戦国時代ですか!!
『三国志』が大好きな私、このあたりの時代は『小説十八史略』(陳舜臣) レベルですけど、大好きよ。
主人公が「おバカな絶叫系」(ごめん…信)っていうのは私の好みではありませんし、なんかオープニングからアクションが大げさすぎる気がしますが、少年マンガ(…と思っていた)ならそんなもの?
初登場の時、人物の名前を漢字で出してほしいと、軽く苛立ち。
そうでなくても、漢字の名前って日本で発音すれば同音だらけなんだから、名前がイメージできなくて困る。
で、気に入っていたヒョウ君は、漢字が判明する前にいきなりお亡くなりになるし(泣)
何で、うるさい方が…(ごめん…信)
で、この少年が、秦王と出会い、成長しつつ大将軍への道を歩む話なんだろうなと理解しました。

アニメの方は帰ってからも続けて見ていましたが、なんとなく自分のイメージとずれていて、「これって、原作の方がおもしろいんじゃない?」と思いました。
けっこう巻数がありましたが(現在26巻)、『総集編』が出てることがわかり、様子を知りたいだけなんだからこっちでいいよね、と…(でも、これは単行本未収録作品があるので正解だった♪ ネット書店で売り切れてるし)
Ⅰが来て、しばらくしてⅡが出て、続きのコミックスを5冊くらいずつ買って(自宅にいながらにして買えるネット書店万歳!)、史記などの参考図書を集めて、…ヤングジャンプを配達してくれる本屋さんに頼んで(でも次号は休載で、待機じゃあ)、はい、もう心奪われまくりです。
元気なら夏コミにだって行っちゃいそう(ココココ 行きませんけどねェ 本当ですよォ)

キングダムのどこまで史実なのかは、私にはよくわかりません。
そんなに詳しい資料は持っていないし、史書に出てきても「ナントカの戦いで誰が攻めて何万人死んだ」で片付けられたりしているわけだし、後世の人が、良くも悪くもいろいろつけ加えたり省略したりして史書になっていくわけだし。
それでもたまに、この時代にこんな言い方はなかったとか、このエピソードはありえないとか思うこともあるんですが、結局、そんなことはどうでもいいやと思わせるおもしろさ。
高校生の時、横山三国志を借りて少しだけ読んで(完結してなかった筈)、続きがどうしても知りたくて、図書室で吉川三国志を借りて、分厚い三冊本を、三日、二日、二日で、家に帰ってからひたすら読み耽った幸せな時間に勝るとも劣らない至福の時。
そもそも、吉川三国志だって三国志演義だって史実じゃないもんね。
ああ、入院してて良かった♪

これから、アニメの連続放送を見ます。

【キングダム 集中放送】
NHK BSプレミアム 23:45~25:00
7月23日(月) 第1話、第2話
7月24日(火) 第3~第5話
7月25日(水) 第6~第8話

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明治3年の鉛筆の呼び名 ~筆箱事情調査 番外~

『はじめて学ぶ日本の絵本史Ⅰ』(鳥越信/ミネルヴァ書房)を読んでいたら、子ども向け絵本の草創期(明治初期)の本として『絵入智慧の環』という本が紹介されていました。
1870年~1872年(明治3年~5年)に発行された全8巻のうち、絵本と呼べるものは『初編上 詞の巻』『初編下 詞の巻』の2冊、いろはの文字とそれにつながる言葉で描かれた絵(例:「い」なら、ひらがなの「いぬ」 漢字の「犬」 「犬の絵」が1ますに書いてある)、簡単な文とそれにあった絵などでできているとのこと。
私の目をひいたのは、次の部分でした。

下巻の内容も似たような構成だが、(中略)一五ページにわたる「わたりもののなよせ」すなわち「外来品の名寄せ」として、「蒸気船」「自転車」「大砲」等々、欧米の先進的科学技術が生みだした物や、「せびろ」「ずぼん」といった日用品などを、絵で示しながらその名称を教えようとしている(図序-4)。
 
     

同書8ページより

図版に「たもと時計(懐中時計)」「寒暖計」「双眼鏡」「かけ時計」「望遠鏡」「晴雨計」がのっているページが出ていました。

外来品の名前が出ていて、子ども向きの本なら、筆箱はないまでも文具はあるだろうかと、『絵入智慧の環』の初編2冊を取り寄せてみました。(復刻版はないようなので、古書)

「わたりもののなよせ」のページで、文具のページは以下のようでした。
Photo_2


出ている絵は、ペン、鉛筆、石板、石筆の4種類。

ペンは確かに「ペン」と書いてありますが、鉛筆は「ペンシル」でない語が先に書いてあります。
しかも苦手な変体仮名で。

たぶん、聞いたことがないけれど「ぽっとろおど」であろうと思います。
なので、解説の文は「ぽっとろおど また ぺんしる とも いふ 石筆といふ ハ くろし」でしょうか。
(自信がないので、詳しい方教えてください)
追記:これは「石筆といふハ『くろし』ではなく、『わろし』と読むことがわかりました。※後述

鉛筆が「ポットロード」と呼ばれ、しかも「ペンシル」より先にくるなんて不思議でした。
頼みの『日本国語大辞典』が今使えないので(足のけがをしているため、置いてある場所に行くのが困難)、普通に「鉛筆」をネットで検索しても、この語は出ない。
適当な綴りではネットでヒットせず、カタカナ「ポットロード」で検索したら…これはオランダ語の「鉛筆」だったんですね。
オランダ語の可能性は考えていましたが、単純にカタカナ検索でよかったのでした。
つづりは、「potlood」でした。

おそらく、蘭学で先にオランダ語の単語が入り、後から英語が入ってきたためにこうなっているのでしょう。

ただ、「石筆と言ふハ黒し」がよくわからない。
日本の石筆は白ですが、ヨーロッパに黒い石筆はあったので、輸入物しかなかった時代なら「黒いものが石筆」という概念だったのでしょうか。
ものの名前や文字を覚える本ですから、まだ珍しいものである「ポットロード」と「スレイトペンシル」の違いがわかるようにとの配慮だと思いますが、鉛筆だって黒く書けるのになあと、ちょっと特徴を表すのには不適切な気もします。
この『絵入智慧の環』の絵つきの名称で、別名が「~ともいふ」のような書き方はいくつもありますが、こういう解説は他にないのです。
作者にもまだなじみがないものだったのかも。

便宜上「鉛筆」と書いていますが、ここには「鉛筆」という語は登場していません。
なので、明治3年(1870年)の鉛筆の呼び名は、「ポットロード」か「ペンシル」ということでしょう。

図版の鉛筆の軸の文字は、不鮮明ですが「EACLEN」の後に「S」の鏡文字と、「2」が書いてあるようです。

   ☆

以前、このブログでとりあげた、明治時代の絵入り英語エキスト『世界商売往来』はシリーズがあって、『続世界商売往来』(明治5年 1872年)には、

Lead-pencil(リードペヌシル)  【訳】 鉛筆(ホットロート)

とあり、図版は、2ダースくらい紙で丸く束ねられたものとばらの鉛筆1本となっています。

Steelpen(スチールペヌ)  【訳】 銅筆 アカガネフデ

のように、ペンは「フデ」と訳しているのに、漢字は「鉛筆」でも、読みが「ナマリフデ」「エンピツ」ではなく「ホットロート」となっているあたり、鉛筆は鎖国のオランダ語時代に既に日本に入っていて、「ホットロート ポットロード ポットロート」などで通用していたのかもと思います。

ただ、『続々世界商売往来』(明治6年 1873年)では、職業の一覧の中に、

Pencil-maker(ペヌシル メーカル) 【訳】 筆匠(フデシ)

という記載もあり、この場合は ペンシル=筆 です。
そのほうが本の使用者にはイメージしやすかったのかもしれません。

 「石筆といふは わろし」の読みが出ていたのは、『明治事物起源』(石井研堂)です。
この本に行きついたきっかけと、ポットロード等の詳しい内容は、また別に書きたいと思います。

 

【参考資料】

世界商売往来用語索引 (飛田良文 村山昌俊/武蔵野書院) … 『世界商売往来』シリーズの用語索引ですが、原本の複製もついているので、元の絵や表記が楽しめます。

変体仮名とその覚え方(板倉聖宣/仮説社) … 良く使われる変体仮名を整理し、特徴をわかりやすく説明している。明治17年の「讀方入門」の教科書の複製つき。

【このブログの関連記事】

→ 明治6年の英語テキスト『世界商売往来』のpencase ~筆箱事情調査シリーズ~ …今回も使った『世界商売往来』の中の筆入について書いています。

→ カテゴリー:筆箱事情調査  … 筆箱がどこで生まれたのかを調べているシリーズですが、筆箱が出てこないこともあります。

シリーズ最初の記事は、
→ 明治の舶来木製筆箱の図版 ~明治43年『伊東屋営業品目録』より~ その3  へ

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