(「『ノンボテ』ボールペンを調べてみたら… その7 ケルボの行方」 の続きです)
ケルボは、ネットで断片的に名前が出てくるので、情報を拾ってまとめてみることにしました。
まず、ザットユーロビートさんのブログ「昭和の雑誌広告・懐かしモノ」に、貴重な「ケルボ発売」の広告の画像が出ていました。
雑誌「明星」の1980年のもので、「米国製」「ペーパーメイト」「消せるボールペン ケルボ」とあります。
商品は台紙つきのパッケージで売られており、台紙にケルボの名称や説明があり、本体画像には軸に文字が写っていないので、本体はイレイサーメイトそのものの可能性が高いです。
ゴローも、消した。
ふつうの消しゴムで消せる唯一のボールペン、ケルボ
間違いだらけのラブレターなんて……。ケルボを知らなかったのね。ケルボなら、書くときはふつうのボールペンだけど、HBの鉛筆で書いたものと同じくらいカンタンに消せるの。試験でも、レポートでも、もちろんラブレターだって、もう間違いはふつうの消しゴムでOKよ。
ケルボは、アメリカの一流ブランド、ペーパー メイトが開発した、革命的なボールペン。特殊なインクを使っているので、間違えても消せるのです。ただし、一定の期間がすぎれば、インクは定着して消せなくなります。全国のデパート、有名文房具店等でお求めください。ペーパー メイト パワーポイント ボールペン シリーズも同時新発売。ケルボとは違うふつうのインクのボールペンで、360°上向きでもなめらかに書ける、独特の機構を持つ高品質の製品です。
価格 500円 / 軸色 黒 青 赤 / 替芯 350円 / 米国製
違う加圧式ボールペンがまた出ていますが、それは今回はおいておくことにします(汗)。
また、Yumiko Yamaguchi さんの 「日々の雑貨」 2002/04/19「消せるボールペン」の記事の中には、「Erasermax」「Eraser Mate」についての興味深い記述があります。
(D-ink は2001年に発売されたパイロットの「消せるゲルインキボールペンです。)
(前略 D-inkと)もう1種、愛用しているのが、PAPERMATEの「Erasermax」。「D-ink」のような色とりどりの華やかさはなくて、黒のボディでキャップの先に専用消しゴムがついています。一般の消しゴムでも消せます。専用の方がよく消えるような気がしますが。ただし消せるのは書いてすぐ、24時間立つと定着するそうです(実際には1日経っても消せました)。書き心地はこちらのほうがワタシは好き。インクが出過ぎず、長もちします。最初に買った時は黒1色しかなく、しばらくして、赤も売っていることに気付き、ついこのあいだ別の店で青も見つけました。こっちの赤はインクの色もマット系です。「D-ink」の赤は金赤(ブライト系)。ところで、もう1種類、2、3年前に、買ったのかもらったのか、抽き出しから出てきた消しゴム付きのボールペン、ほんとに消せるのにいまごろ気が付いた!のです。「うそやろ」と思って試していなかったのです。ジョークで消しゴムがついていると思ってた。だとするとずいぶん前に「消せるボールペン」があったということになりますよね。このボールペン、「Eraser Mate」って書いてあります。インクは「Erasermax」タイプで、消しゴムがそっくり、前身かもしれません。 (後略)
ここから、ペーパーメイトの消しゴムで消せるボールペンの変遷がわかります。
(この方はケルボをご存じなかったようで、20世紀には消せるボールペンがなかったとおっしゃっていますが、実はあったわけです。)
つまり、イレーサーメイト(日本名ケルボ) → イレーサードットマックス となるわけで、イレーサードットマックスは、ケルボの子孫、ということになります。
それが、日本でどう流通していたかは、掲示板のログからうかがい知ることができました。(過去ログのためうまくリンクが貼れません。元の全文は検索で探してください。)
「PILOTの「消しゴムで消せる」“D-ink”ってどうよ? 」(2001年~の過去ログ) より
27 名前: おかいものさん 投稿日: 01/10/17 22:47
消せるボールペンだったら
ソニプラに売ってある製品が優秀
29 名前: おかいものさん 投稿日: 01/10/18 02:11
>>27
もしよかったら商品名教えてください。
消せるボールペンってすごく便利なんだけど
買ったら色が薄くて失敗でした。
昔買った指で消せる蛍光ペンはあたりだったけど。
30 名前: 27 投稿日: 01/10/18 09:34
>>29
eraser.max MED って印字されています。
また別の箇所にPAPER♥MATEと印字してあります。
色は、赤・青・黒がありましたよ。
42 名前: 投稿日: 01/11/23 12:59
30>サンフォードジャパンから出ている定価200円の物です
D-inkより50円高いけどこちらのほうがいいみたい
44 名前: ななしさん 投稿日: 01/11/30 02:05
20年前に、消しゴムで消せるボールペン使ったこと有るよ。
普通のボールペンより、べとっとした感じのインクでしたが、全然流行らないまま
消えてました。
47 名前: おかいものさん 投稿日: 02/01/08 00:27
ソニプラのerasermax買ってみました。
D-inkとちがって
本物のボールペンみたい。
しかもちゃんと消える。感動しました。
ただ消しゴムがついていないと消せるペンって
だれも気付かないんじゃ?
8 名前: ななし 投稿日: 02/02/19 04:42
20年前の「ケルボ」と比べてどうですか?
2 名前: おかいものさん 投稿日: 02/04/12 21:50
>>58
ケルボ!そういやそんな名前だった…
2001~02年当時は、イレーサードットマックスは輸入文房具として、ソニープラザなどのごく限られた場でのみ売られていて、「消しゴムで消せ時間がたつと定着する」という性質はそのままながら、使った人から高く評価される性能になっていることがうかがえます。
サンフォードジャパンは、ペーパーメイトを含む複数の海外文房具会社のグループのようで、ペーパーメイトの製品がここの製品として扱われていることもあるようです。(→詳しくは サンフォードジャパンのHP へ。会社組織は全然わからないのですみません。)
また、「ケルボはゼブラの製品」という情報もネットではいくつか見つかりました。
しかし、別の本『文房具の研究 心ときめく世界の文房具』(中央公論社 別冊暮しの設計6 1981年)のケルボの紹介文でも、
ケルボ。消しゴムできえる三菱ボールペン。500円(伊東屋)
とあるので、複数の本がそうそう会社名を間違えることもないと思われ、三菱が扱ったものと考えてよいと思います。
また、『アメリカ文具図鑑』(梅沢庄亮 立風書房マンボウブックス 1982年)には、ケルボⅡが紹介されています。
ケルボⅡ(KB1200)
ふつうの消しゴムでも簡単に消せる特殊ボールペンのひとつ。ボディのプラスチック部を片手でもち、もう一方の手で金属部を右にひねると、ペン先と消しゴムが同時に出てくるのがおもしろい。
とかく書き換えが多い電話番号簿や住所録に、これを使うと、ひじょうに役立つ。ただし、時間の経過とともに描線が定着し、消えにくくなるのも確かである。また、容易に消せるため、公文書等には使うことができないから要注意。太さは、ミディアム・ポイント(1ミリ)、インクは黒。替え芯内部でインクに圧力がかかっているので、ペン先をどんな角度に向けても書けるのも特徴のひとつである(ペーパーメイト)。
ケルボのインクは24時間で定着が売りなのに、住所録にすすめるのはどうかと思ったりしますが、ここにもペーパーメイトの名前がありますので、ケルボⅡも国産ではなさそうだと見当がつきます。
今回の情報を加えて、前回の表を修正すると以下のようになります。
【修正版 ペーパーメイト開発の消せるボールペン】
1979年 ペーパーメイト 「イレーサーメイト」を発表
1980年 日本で「ケルボ」の愛称で「イレーサーメイト」が販売される。
(ペーパーメイト製品として、三菱鉛筆?が販売)
1982年までに 「ケルボⅡ」 日本で販売。(※追記参照)
1985年頃まで 「ケルボ」「ケルボⅡ」並行で日本の文具店で売られる。
1986年 「ケルボ(イレーサーメイト)」一般文具店から姿を消す
2000年頃まで? ペーパーメイトの「イレーサーメイト」
輸入品店などで細々と売られ、その間に改良が進む。
2001年までに ペーパーメイトの「イレーサードットマックス」発売される
今後もまだ訂正、補足が出てくるとは思いますが、「ペーパーメイトは日本での評判にかかわらず、ずっと、消しゴムで消えるボールペンを作り、改良を重ねていた」ということがわかりました。
しかし、日本では「ケルボ」として売られなくなってから、しばらく「消しゴムで消せるボールペン」は一般文具店では見ることができず、限られた人が輸入品店などで見つけて愛用する品となったのです。
このため、2001年の「消せるゲルインキボールペン」D-ink が出たときには、ケルボのことを知らない人も多く、「消せるボールペン」はブームになり、また、問題もおこしたのでした。 (続く)
→ 「ノンボテ」ボールペンを調べてみたら…その9 かつ消え、かつ結びて へ
※追記
広告資料が見つかったため、年表中の「1982年までに 「ケルボⅡ」 日本で販売。」は、「1981年までに」となることがわかりました。
詳しくは、
→ 「ノンボテ」ボールペンを調べてみたら…その11 ケルボⅡの広告より へ
→ 関連記事は、 カテゴリー シリーズ:ノンボテ&ケルボ へ
最近のコメント