暮しの手帖

プリントゴッコ初期の評判 その2 ~消耗品販売終了を惜しんで~

(この記事は、プリントゴッコ初期の評判 その1 の続きです。)

雑誌「暮しの手帖」プリントゴッコが取り上げられたのは、1983年冬号(第2世紀 87号)です。
私たちの暮らしに密着した数々の商品テストを行い、性能に問題があれば「買うべきではない」とばっさり切ったこの雑誌の、プリントゴッコへの評価はどうだったでしょうか。

記事の題名は「家庭で印刷できる小さなキカイ」です。
プリントゴッコが発売されてから数年後の年賀状の様子から記事は始まります。

 ここ、二、三年にいただいた年賀状をみると、おやっと思うことがあります。あいかわらずの紋切り型の文面、黒インクの一色だけで印刷されたものにまじって、その人の書き文字やイラストが印刷され、インクも赤や緑を使ったカラフルなものが目立つのです。
 さぞかし、お金もかかることだろうと聞いてみると、プリントゴッコだよ、といいます。はじめは、一万円、うーん、ちょっと……と思ったが、何回も専門の印刷屋さんに頼むことを考えると、高くはない、といいます。
 手づくりブームとやらで、年賀状やあいさつ状にも、見本をえらんで印刷屋さんに頼むよりも、自分で工夫しよう、自分だけのものを作ろうという時代になってきたのでしょうか。このプリントゴッコは、家庭でかんたんにカラー印刷がたのしめるということで、すでに、170万台以上も売れているそうです。ねだんは、ハガキサイズ(B6)の大きさで1セット9800円。
 ほんとうに、かんたんに、手製の年賀状やあいさつ状がカラフルに印刷できるのか、また費用はどれくらいかかるのか、じっさいに使ってみた結果をご報告しましょう。

「ここ二、三年」の年賀状は、1981年~1983年くらいのお正月のもので、すでにプリントゴッコの年賀状が広がりつつあることがわかります。
暮しの手帖の調べたいことは、操作、出来栄え、費用のようです。

小見出しを追って行くと、

「★かんたんにできる★  ★できばえはみごと★  ★維持費はかかるか★ ★必需品ではないが★」となっており、おおむねいい評価だと思います。
以下、要約をしてみます。

* * * * * * * *

★かんたんにできる★

・原理の説明(謄写版のような孔版印刷)
・原稿はカーボンが含んだ筆記具か黒く印刷されているものの切りばりでできる。
・製版は原稿の上に原紙を置いて光らせるだけ。
・インクは7色ついていて、混ぜて使うこともできる。
・原稿を作る時間を別にすると、印刷できるまで5分とかからない。

★できばえはみごと★

・黒一色や多色刷りでいろいろ印刷したが、思った以上にみごとなできばえ
自分で書いたものがまったく同じようにつぎつぎと印刷されてくるというのは、ちょっとした快感でもある。
・画数の多い文字はやや読みにくいようなので、あまり小さい字は避けた方が無難。
・一度インクをのせたらある程度まとまった枚数が刷れてほしいが、ふつうの原稿ならうまくインクをのせれば70枚から80枚ぐらいは一度に印刷できる。
・印刷を中断するときは、ビニールの袋に入れてほうっておいたが、3日後でもほんの少しインクがかすれる程度。
・インクが乾くまでに10分程度かかるので、狭い部屋だとどこに置いてよいか困る。そういうときは新聞紙や週刊誌にでもはさんでおく。
・かなりいろいろな技法が使える。(多版刷り、色の濃淡をつけるなど)
・写真から原稿をつくることもできるが、あまり鮮明にはいかない
・自分でうまく書けない人には、インスタントレタリングやカット集を切りばりする方法もある。

★維持費はかかるか★

・今、黒インク一色のハガキ印刷を印刷屋さんに頼むと、ざっと百枚で五千円くらいかかる(カットや色が加わればもっと)。プリントゴッコは何回も使えることを考えれば初めの一万円も高くはないだろう。
・1回製版すると、ランプが2個で196円、原紙が1枚で98円かかる。製版がうまくできようが失敗しようが、1回300円かかる。多版刷りにすると費用も2倍3倍になる。
・インク(40cc 250円)は、原稿全体に大きく印刷するためには半分近く使うこともある。

★必需品ではないが★

ここで、比較品として、堀井謄写堂のマイプリンターという小型謄写版が出てきます。
現物を見たことはありませんが、小型の謄写版の上部に2色のインクつぼ?がついていて、ローラーとインク板とのセットになっています。

マイプリンターの特徴

・ハガキサイズのローラー式の謄写版
・青いボールペン原紙を使う。
・付属のボールペンや筆ペンで字や絵を書いて印刷する。(←ボールペン原紙用の筆 はどういうものか興味があります)
・プリントゴッコほどではないにしてもまずまずのできばえ。
・カラーインクもあり、多色刷りも可能。
・枚数はたくさん刷れるが、インクの乾きが遅く、手が汚れたり、後始末が厄介。
・切りばり原稿は使えない。
・本体3500円、原紙1枚20円と安い。

文字だけの印刷なら、それなりに使える、という評価。

結論は、これらの小型印刷機は毎日使う必需品ではなく、年賀状は手書きに限るという人もいるということを述べた上で、

どなたにでも、というものではありませんが、ひとつ今年は年賀状を自分で印刷してやろうと意気込んでいる人とか、しょっちゅう幹事役を引きうけるという人には、こういった印刷機は役に立つでしょう。

となっています。

無駄なものを排斥する「暮しの手帖」が、文字だけならマイプリンターでいいと言いつつも、プリントゴッコの簡単さと印刷品質を目にした後では、評価が「十分」でなく「まずまず」や「それなりに」になってしまっているのがわかります。
自分の書いたものが次々に印刷される「快感」という言葉に、実際の使用者の素直な感想が出ていると思います。

当時、私はまだ学生で、1万円という価格にはとても手が出なかったのですが、黒一色イラストなしの印刷にも5千円かけていた人たちには、十分元が取れる商品だったのだろうと思います。
もちろん、自由にイラストを書いて印刷したい人、自分でカラー印刷をしたい人には、新しい表現の道具として。
誰にでもできるカラー印刷を普及させたプリントゴッコの功績はとても大きいと思います。

この時に、「暮しの手帖」が挙げた不満点は、価格以外は対策が取られたように思います。
それは、多くのユーザーからの希望でもあったと思います。

・小さな文字がつぶれる、写真が不鮮明 → ハイメッシュマスターハイメッシュインク へ

・印刷したハガキを乾くまで並べる場所がない → ゴッコカードラック に並べる

そのほかにも、誤って原紙をはさまずに製版してしまった場合の透明プラスチックの交換できる部品とか(←実際、自分がやって交換しました)、スポンジ状の台が劣化した時の交換用とか、高い本体の買い直しをしないまま快適に維持できたことは、とても省資源な製品だったように思います。
取りだすのは年に1度であっても、十分役に立ち、また、楽しい商品でした。
多版刷りの仕上がりが、いつもできてみるまでわからず、色合いや刷り順をどうしたものかと考えるのも毎度のことでした。
ねらった通りの効果に仕上がった時は、とてもうれしかったものです。

私たちは手軽にいつでもカラー印刷をすることができるパソコンとプリンターという道具を手に入れましたが、そこに「手づくり」の味わいを出すことは逆に難しくなりました。
お仕着せではなく自分らしさを求めていったはずが、市販品に近いものになるのは不思議なことです。

【このブログの関連記事】

→ プリントゴッコ消耗品値段改定 

→ プリントゴッコ消耗品を蓄えておく

→ プリントゴッコ初期の評判 その1 ~消耗品販売終了を惜しんで~

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今年の「けふこの本棚と文具の引き出し」

今年後半、全然更新が進まなかったこのブログですが、たくさんのアクセスをありがとうございました。
過去記事にも拍手を入れてくださった方、励みになりました。
ありがとうございました。

(フェリシモ500色の色えんぴつ)

フェリシモ500色色鉛筆の記事は一つしかなかったのに、カテゴリーになりました。
色鉛筆復刻にあたり、歓迎や不満は一通り出たという感ですが、フェリシモはまだまだ関連商品を出してくるようです。
いい、悪いはともかく、他にない独特のフェリシモ商法を考えてみるきっかけにもなりました。
過去の500色色鉛筆関連商品も自分が知っていた以上にあるようで、資料を収集するのが手一杯だった今年後半。
比較してみたくて、各社の色鉛筆にも手を広げ、鉛筆の数より、記事の数を増やすべきでは…それより絵の一つも描いてみるべきでは…の今日このごろです。
先日、近所の店で、三菱ユニカラー240リミテッドエディションの現物を見ました。(シリアルナンバーは1200番台だったかな)
どうしてこの状態で展示しなかったんだろうなあ、の美しさでした(買えませんが)

(悪徳商法関連)

アクセス解析から出てきた富士紙製工芸をたどっていったら、いろいろな方のアクセスがあって、これまたカテゴリー化。
桑茶のアクセスもよくあります。
このような商法は、普通に生活していても、当たり前に出食わす可能性があるのだなあとしみじみ思いました。

(栗本薫&中島梓さんの訃報)

JUNEやグイン・サーガに親しんでいた私には、なかなか認められないできごとでした。
アニメ化されたグイン・サーガは、久々に、毎週楽しみに待つテレビ放送になりました。

そのほか、妙に目立っているケシカスくん、作っている方が見つかった金魚袋のビニールひも手芸、公立図書館で廃棄していたことがわかった「暮しの手帖」バックナンバーなども今年の収穫かと思います。
「暮しの手帖」はしかたないので、第2世紀を入手しました(置くところがないのに…)
記事が増えないのに、迷惑コメントばかり増えて、コメント欄を承認制にしてしまいました。
コメントくださった方、いつもお手数をかけてすみません。
おさまってきたら解除したいです。

まだまだ書きたい話題はありましたが、体力がついていかない感じでした。
これからはぐっとローペースになるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いいたします。

どうぞみなさまも、よいお年をお迎えください。

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怒涛の買い物 8月末

旧盆明けくらいから休暇だったので、たまった用事を一気に解消(除 片付け)すべく、出歩いたり買い物をしたりしていたので、ブログの話題はたくさんあるものの、処理する時間と体力がなく、しばらく休んでおりました。

【出歩き編】

A 日暮里繊維問屋街 → 浅草橋 → 東京駅ユニカラー240展示 → 日本橋丸善

今回の浅草橋は文具問屋には行かず、アジア系雑貨などを見た程度。丸善は久しぶりに行き、文具もじっくり見ましたが、もっと時間がかかったのは、謎の「バイオーター」のグラスリウムだったかも。

B 神保町古書店街 → ミュージカル「ダンス オブ ヴァンパイア」 → 無印良品 有楽町 → 銀座ヤマハ仮店舗 → 東急ハンズ銀座店 → プランタン銀座 ボタニカルズ 

古書店街では探している本は見つからなかったのですが、他の本や、猫グッズを売っているところを見つけたし、三省堂書店の新装文具コーナーも見てきたのでいいかなと。
無印とハンズはたまたま通り道にあって、まだ行ったことがなかったので見学に。
ボタニカルズのハーブティーは、おいしくて飲みやすくお気に入りです。

C ザ・ダイソー町田店 → 和多屋 → ヴィレッジ ヴァンガード 町田店 →東急ハンズ 町田店 → ブックオフ町田店 → 小田急百貨店 ヴェーダヴィ

ダイソー町田店は、5階まである日本一の大型百円ショップです。
店内に3時間以上いたんじゃないかと…すごく暑い日だったし出歩きが多くて疲れていたので、時々目の前がぼうっと白っぽく…(←君は行くのか そんなにしてまで)
ハンズ以外は偶然見つけたのですが、好きなものがいろいろそろっていて、目の前があやしくてもつい外せずに長居してしまうのでした。
和田屋は呉服屋さんですが、猫小物が充実、ヴィレッジ ヴァンガードは、珍しい本やおもしろ文具の宝庫でした。
町田は移動時間があまりかからないで次のポイントに行けるのがうれしいです。(今回が2度目だけど)
ヴェーダヴィもハーブ関係です。
ほしいエッセンシャルオイルがボタニカルになかったので寄ったのですが、こういうコーナーの香りの力はすごいなあといつも思います。
それまでの、イライラとか疲労とかが、そこにいるうちにすうっとひいていくのがわかるので。(最初、ボタニカルに寄ったときにそんな効果があって、以来ファンになっています。)

【買い物編】

A 防災関係

防災用品はそこそこ準備してあるのですが、静岡大地震があったので、さらに買い足しをしている最中です。
買った中て、一度試食してみようと思っているのは、パン・ケーキの缶詰
災害時にそんな心の余裕がほしい気がして。
実験してみたいのは、 湯沸かしBOX基本セットでどうやってお湯を沸かすか。
余分に買ってあるけれど、なかなかやってみる時間がないのが難点です。(いきなり本番は嫌)

B 本

いろいろありますが、うれしかったのは、『オバケのQ太郎』が復刊されたことです。
偶然、近くの本屋に置いてあって復刊を知ったのですが、私はドラえもん育ちではなく、オバQとパーマンの世代なので、まずはこの2冊(『オバケのQ太郎 1 』『パーマン 1 』を購入しました。
オバケのQ太郎は長く絶版になっていて、そういえばこの理由は何だっけ? と『封印作品の闇―キャンディ・キャンディからオバQまで 』を読んだりして、本が増える一方。
他にもまだ取り上げたい本がいろいろあるのに、『ガラスの仮面』は44巻が出て、ほんとに充実しすぎなこのごろです。
『グイン・サーガ』は文庫版が手に入るうちにそろえておきたいし…しかし、何巻まで買ったのか 汗。(←多すぎて、一か所に収納できていないのです。)
暮しの手帖については、前記事よりぐっと進展しているのでこれも書きたいし、まだ、とっておきの本と付録もあるし…。

C 文具

上記の店のほかに、近所やネットでも購入しています。(買い物依存症~)
こちらも、猫もの、音楽物は充実傾向です。
そうこうしているうちに、ケシカスくん文具新学期バージョンや、フェリシモの次の色鉛筆が来てしまうに違いない^^; どうしよう。

☆  ☆  ☆

このうち、どれがブログで陽の目を見るのかまったくわかりません。
(去年も、夏だったステーショナリータニィ訪問記が秋までかかっていましたし)
このごろ、仕事がハードで夜起きていられないので。
まだ保留している宿題もたくさんあるので、消化する体力がほしいこのごろです。

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本は個人で保存する時代なのか ~公立図書館と「暮しの手帖」~

市立図書館に行ったついでに、以前から気になっていた「暮しの手帖」の索引について、レファレンス窓口で聞いてみました。

この図書館では、かつて「暮しの手帖」第1世紀(通巻1号~100号をこう称しています)を合本製本して保存していたことを私は知っていました。
創刊号は1948年発行。
そこから全号そろっていたかはわかりませんが、第2世紀の途中からしか読んだことのなかった私は、家にない「暮しの手帖」が読めて感激し、図書館ってすごいなあと思ったものです。
第2世紀(通巻101号~200号)は1969年発行からですから、第1世紀終了はそれより前。
私が図書館で合本を見つけたのはたぶん70年代後半~80年代ですから、10年以上前のものが保存されていたわけです。

そんな過去があったので、当然、この図書館には「暮しの手帖」は第1世紀からそろっているものと思っていました。
私の用件は「第2世紀の索引があるかどうか知りたい」でした。
「暮しの手帖」は、かつて、ずっとバックナンバーを販売していて、それぞれの号の後ろにそれまでの号の目次がついていた記憶があるのです。
なので、100号に総目次がついていたら、昔の文具の商品テスト(ボールペンとか消しゴムとか肥後守とか)のことなどを調べたい時、該当の号をすぐに見つけることができると思い、コピーさせてほしかったのです。
ただ、最後までバックナンバー目次がついていたかは覚えていなかったので、場合によっては第二世紀の実物を何冊も出してもらうつもりでした。

ところが、パソコンで困ったようにあれこれ調べていた係の人は、やがて、「『暮しの手帖』は3年分しか保存していない」というではありませんか。
何? 3年分って。
では、あの「第1世紀」のきちんと製本したものまで廃棄してしまったっていうんですか!?
あんな貴重な資料を!!

図書館が、本を買わずに読んで済ませたいという人対象なら、新しい話題の本がそろっている方がいいに決まっています。
でも、過去のことを調べたいときには、これではどうしたらいいのかわかりません。
古文書は収集するのに、昭和の歴史は収集しないのですか?
「昔の暮し事典」のような本はいろいろ出ていますけれど、そんなものより「暮しの手帖」がとりあげていることを見ていけば、時代がはっきりわかるのに。
収蔵スペースに限りがあることは知っていますが、これは捨ててはいけない雑誌ではないですか?
後世に戦後からの昭和の歴史を伝える資料として。
元からなかったのならしかたがありませんが、確かにあったのにと思うと残念でなりません。

私の家にもずっと「暮しの手帖」がとってあったのですが、家人が無断で処分してしまい、すごく悲しかったけれど、でも図書館にあるからと思っていたのです。
甘かった。
近隣の図書館を一応調べてくれたのですが、これまた「暮しの手帖」を保存している図書館は皆無に近い状態でしたから。

ちょっとのことを調べるために、国立国会図書館や大宅壮一文庫(どちらも日曜休館。オンラインのサービスなどはある)に行かなくては用が足りないのでは、時間の自由がきかない人にはお手上げです。
図書館は家の近くにあるのですが、平日は閉館が早くてまったく使い物にならないので、辞典や資料などは自分で買うようにして、あまり利用していません。
そして、本が本棚に入りきらずに大変なことに…
この上、暮しの手帖(とりあえず第2世紀、できれば第1世紀も)を入れるスペースはないのですが(ないから処分された)、こうなると世間に存在するうちに入手しておかなくてはいけないのかと焦ります。

図書館では廃棄している雑誌も、古書店やネットオークションではかなり古いものがまとまって売られていたりします。
それらは個人の保管していたもの。
資料は、「個人の保管 → 個人の保管」 となるばかりです。
その人が資料を譲り渡す個人(や古書店)が見つからなければ、その資料は捨てられてしまいます。
図書館に寄贈しても雑誌や古い本では廃棄される運命のようですから、何としても個人で「所有」しなくてはなりません。
それもなかなか辛いところです。

たまたま今回は「暮しの手帖」でしたが、たぶんいろいろな分野で同じことが起きているように思います。
そして、気がついたら、山ほどあった情報が、新聞の縮刷版くらいしか残っていないかも。
それでいいのかなと思います。

収納スペースに限りがあるのはわかっていますから、近隣の図書館同士で力を入れるジャンルを分担し、「○○に関する本や雑誌は××図書館が持っている」みたいに、どこかで用が足りるようにはできないものでしょうか。
いえ、そうしているところがあると思いたいです。
図書館は、楽しみの読書を推進するだけでなく、文化の足跡を蓄積していく場所でもあるはずですから。

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「暮しの手帖」が好きだった

子どもの頃、「暮しの手帖」の第二世紀(通巻101号から200号までをこう呼ぶ)を読んでいました。
花森安治編集長の思想が色濃く現れたこの雑誌は、ジュースの着色料や、パック売りの商品の重さや品質のごまかしなどを告発。
過剰な装飾や、きちんとした機能のない商品は否定して、きちんと商品テストをするのが、とても好きでした。

メーカーでは、負荷をかけたり機械で一定の条件でテストするものを、人間が実際に使うようにして長い時間をかけてテストする。
電球か蛍光灯のテストをしたときには、テストの最中にはたきをかけて1個壊してしまい、最初からテストをやりなおした、そのくらい徹底したものだったそうです。
一つの記事を書く前に費やされた膨大な時間と手間を感じました。

記事の中に、文具も何度も登場しました。

今でも覚えているものをざっとあげると、

【追記:2011年5月 載っていた号を加えました】

【肥後守】 第2世紀59号
ナイフで鉛筆が削れないということへの憂慮をこめた記事でしたが、その中で数々の肥後守の使い勝手を調査しています。
その結果、よかったものは「○○肥後守」を名乗る3社のものとあと数個。
肥後守は、その3社の登録商標なんだそうで、「○○肥後」とか「肥後ナイフ」とかいうものよりも確かに性能がよかったそうです。

【0.3mmシャープ】 第2世紀65号
「君のは細い、マチャアキよ」という題だったと思いますが、
すぐ折れる使いにくい0.3mm芯のシャープペンを、大々的に宣伝して売るのはどうか、という批判記事でした。
0.9mm芯なら折れないし、その程度の細さで十分、ということだったかと。

【スティック糊】 第2世紀49号
まだ出始めの頃のもの。比較したのは、プリット、ウフ、ピットでした。
糊の粘り加減とか使い勝手を比較していました。容器がもったいないという意見もあったような?(ここは記憶にない)

【多面、鍵つきなどの筆箱】 第2世紀23号「カギつき筆箱を売らない百貨店の見識、77号「筆箱をオモチャにしないでほしい」
子どもの文房具をおもちゃにするなというので、相当批判していました。
中に、高級鉛筆のユニやモノが立派なプラスチックケースに入っていることから、
これにウレタンなど敷けば立派な筆箱になり、「しかも、鉛筆が12本もついてくるのだからこれほど安い買い物はない。」と書いてあったと思います。

【子供用スチール学習机】 第2世紀「買い物会議」16号「勉強できない机」、 22号「危険な勉強机」
学習机も、いろいろな付属品がデラックスにつく時代だったので、余計なものはいらないと批判していました。(基本的にシンプル イズ ベスト な雑誌なのです)

【水性ボールペン・水性サインペン】 第2世紀81号
実際に人間が書いて調べるテストでした。そんなにひどいものはなかったように思います。サインペンはかなり長持ちしていました。

【筆ペン】 第2世紀49号、69号
筆の穂先にいろいろなタイプがあるので、筆に慣れていない人にはこういうもの、みたいに、個人差に応じての評価がされていたと思います。

【ノン ナンセンス】 第2世紀76号(77号にその後の報告)
シェーファーの廉価な万年筆。プラスチックの安価な万年筆の中でも、珍しく太字が書けて、書き心地もなかなか、と高い評価でした。

昭和B級文化の日曜研究家、串間努さんは、こういう「暮しの手帖」スタイルはお嫌いのようで、そういうものがほしかった子どもの気持ちがわかっていない、と著書で書いていらっしゃいます。

でも、私は「暮しの手帖」信奉者の子どもでしたから(←子どもとしては変かも)、鍵つき筆入れは嫌々使っていたし(←いらないのに買ってくれたのです)、鉛筆をナイフで削れるように練習したし(←今は色鉛筆にしか使ってませんが)、ナイフは「肥後守」の名前をさがして買ったし、ノンナンセンスも買いました。

私が、普通の文房具の性能や使い勝手にこだわるのは、この「暮しの手帖」のスタイルが強く影響していると思います。

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